ファッションショー*1 ページ25
放課後。俺は帰り支度を済ませてから、鞄を持って教室を出た。そして少し校舎内を見て周ろうと廊下を歩く。
進路相談室、購買部、レッスン室……よし、あらかた場所は把握できたかな。
そろそろ帰るか、と踵を返したそのとき──ふと、視界の端で何かが光った。
「ん?」
拾い上げると、それは服を装飾する小洒落たボタンのようなもの。んー、制服のとは違う。誰かの落し物か?
「一体誰の──」
「んぁああああ!」
「っひ!?」
突然の叫び声に心臓が口から飛び出るかと思った。見るとそこには、黒髪の見知らぬ先輩がいた。彼は瞠目しながら詰め寄ってくる。
「あんた!そ、それっ、どこで見つけたん!?」
「え?えっと、さっきそこで拾って……」
「ちょっと見せてもろてもええ?」
「ど、どうぞ」
彼は俺の手からボタンをひょいと掬い上げると、食い入るように見つめた。
「……やっぱり。コレ、ずっと探しとったボタンや」
ほっと安心したような顔をする。どうやらこの人の持ち物だったらしい。持ち主が見つかって何よりだ。
「ほんまにありがとう。助かったわ」
「いえ、気にしないでください」
軽く会釈してから、彼の隣を通り過ぎる。
「あ、ちょっと待って」
「はい。なんでしょ……う?」
振り返る。俺は改めてその人の顔を見て、思わず息を飲んだ。
「わぁ、綺麗……」
目の色が左右で違う。オッドアイって言うんだっけ?ネットでたまに見かけるけれど、実際に目にするのは初めてだ。
「飴玉みたいで可愛いですね!あとおいしそう!」
「おい、しそう?」
ぱちくり、と長いまつ毛を何度か揺らして、ボタンを片手に持ったまま微動だにしなくなる。あれ?どうしたんだろう?「おーい」と目の前で手を振ると、彼はやっと我に戻ったらしい。
「……そんなふうに言われたん、初めてや。んぁ〜、あかん!なんや小っ恥ずかしい!」
バラ色に染まった頬を両手で押さえる彼。左右の飴玉をうるうると揺れている。
「あの、大丈夫ですか?」
「ハッ。せや、こんなことで呼び止めたわけじゃなかった!んっとな、ボタンのお礼させてほしいんよ」
「お礼?そんな大袈裟な」
慌てて手を左右に振ると、彼は「あ」と俺の腕──詳しくは、制服の裾を指さした。
「そこ、ほつれとるで?」
「え?……あちゃー、ほんとだ。いつの間に」
一部分だけ糸が出ている。どこかに引っ掛けたみたい。
「お礼の代わりと言っちゃあ何やけど、おれに縫わせてもらえん?ちょちょいのちょいでやったるわ」
「いいんですか?」
「おん。あ、すぐそこに部室があんねん。せっかくやしそこで直そか。今なら、お師さんがいるかもしれへんし」
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苺バニラ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます!そう言って頂けると、嬉しい限りです!更新が遅めになっていて申し訳ない気持ちで一杯ですが、これからも頑張ります! (2019年8月20日 14時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りな - 凄く良かったです!!面白かったです!!更新無理をせず頑張ってください!応援します!! (2019年8月20日 10時) (レス) id: 55c1958e88 (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - りさこさん» ありがとうございます(*´ω`*)とっても嬉しいですし、励みになりました!りさこさんは優しい方ですね!今後も頑張ります!! (2019年7月29日 7時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りさこ(プロフ) - 更新お疲れ様です!とにかく最高でした!!これからも応援してます!! (2019年7月29日 0時) (レス) id: c7281289de (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - 夜桜ナイフさん» ありがとうございます!時間が空き次第でよければ、拝見させてもらいますね! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
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