男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

107、曙のメール ページ9

《赤い夕日がとても綺麗で見惚れる程だったよ。ただ、雲がかかっていて残念だったんだけど》

そんな内容のメールが曙から届き、持っていた携帯を落としてしまった。
…赤い夕日が、雲がかっていて。

「パンダ？どうかしやした？」
「…い、いえ。手を滑らせてしまって」

慌てて携帯を拾って返信メールを打つ。

《それは私も見たかった。雲がかかっていない綺麗な夕日は見られるだろうか？》
《すぐに見られるようになると思うよ》

すぐにそう返信が来てホッと一息つく。
…良かった。

「…パンダ、浮気はいけねぇなァ」
「な、何のことですか。人の携帯勝手に覗かないでください」

慌てて携帯を閉じて隊服に仕舞い込んだ。

取り敢えず本部に行って事情を聞かねばならないが…隊長を連れて行っても大丈夫なのだろうか。

纏め終わった書類を一箇所に集めて机に置いてから隣に座っている隊長を見た。
どうやらじっと見ていたらしく、すぐに目線が合う。

「さっきのメール相手、誰なんで？」
「…趣味仲間です」
「趣味？パンダに趣味なんてあるんだな。意外でさァ」

意外とは失礼な奴だな。

「…ちなみに、趣味ってどんなので？」
「秘密です。今日本部に行きたいんですが、予定はどうなっていますか」
「趣味とやら教えてくれたら行ってやらァ」

ここで温泉、なんて言ったら駄目…だよなぁ。
私は体に問題を抱えていて、という設定に確かなっているはずだし…。

「隊長には関係ありません」
「…へー、隠したい趣味か…。お前も隅に置けねぇなァ」

なにか変な趣味だと思われてるのか、ニヤリと笑った隊長から少し距離を取る。

「確かに似合ってたとは思うけど…まさか女装が趣味とはねぇ…」
「な、何故女装なんです？しませんよそんな事」

そこで女装チョイスは謎だろ。

「え？じゃあもしかして夜の街を巡って」
「か、観光名所を散策するのが趣味なんです！もういいですよね！」

私はそんな変な趣味持っているように見えるのか！？
取り敢えず慌てて観光名所巡り、なんて言ってしまったが…嘘はついていない嘘は。
温泉だってしっかり観光名所だ。

「…ふーん？まあいいけど。そいつ、男？」
「……ええ、まあ」
「ふーん…」

面白くなさそうな顔をして立ち上がった隊長は、「行きやすぜ」と声をかけてきた。
…一応本部に向かってくれるらしい。

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