男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

138、諦め ページ40

どうしよう。
隊長のことが本当に好きすぎてどうにかなりそう。

風呂に浸かりホッと息を吐いたのも束の間、私は思わず湯船に顔を漬け込んだ。
なんでこんな事になってきてしまったのだろう。
ずっと諦めよう、友人でいれれば充分なんて思っていたはずなのに、気が付けばもう逃げ場がないくらい好きが強くなりすぎている。

隊長が悪いんだ。

なんであんなに優しく笑うんだ。
なんであんなに優しく触るんだ。
なんであんなに……。


「ぁー……」

湯船から顔を上げて小さく声をもらした。
なんだか、最近好きって、言ってしまおうかなんて思ってしまう自分がいる。
それが何より一番困ることだった。
伝えるつもりはずっとなかったはずなのに。
自分の体が自分の言う通りにしてくれなくなりそうで本当に困った。

分かってるのか、私。
いくら好きを伝えたところで、私には問題が色々あるんだぞ。
性別の事もそうだし、影の事もそうだ。
私には隊長に秘密にしていることがありすぎる。
それを言わずに隊長に気持ちを伝えて本当に良いと思っているのか？

…駄目だろう。
そんな不誠実な真似、それは絶対だめだ。

そうやって毎回自分自身を戒めているのに、隊長を見てると好きが溢れかえって。
全部どうでもよくなってしまいそうになる。

「絶対、駄目」

駄目なんだよ、私。
駄目なんだよ、私じゃ。
伝えてもどうしようもないだろう、私。
こんな気持ち持っていてもどうする事も出来ないだろう、私。

私は影だ。
元々表の世界にいる事が許されない裏の存在だ。
私を恨む人憎む人沢山いる。
…もし隊長が普通の、一般人だったらその理由できっと遠ざけられるのに。
何の因果か隊長は真選組という表と裏の境にある場所に所属している。
恨まれるのも憎まれるのも…そこの観点はきっと同じだ。

ああ駄目だ考えすぎちゃう。
風呂から上がり、隊服に身を包んだ私を鏡が写した。

…それでも、私は隊長のそばにいたい。

こんな気持ちを抱えても、こんなに苦しくても。


扉を開けてソファーに座る隊長を見た。
隊長は私の姿を見て少し顔を綻ばせて、ちゃんとあったまったか、なんて言ってくる。

ああ、だめだ。

やっぱり好きなんだ。

この気持ちはもう消す事も変える事も出来ないや。

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