男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

124、パンダと呼んで欲しい ページ26

書類の整理をしながら、私はそっと小さくため息をついた。
繭の、あの言葉がどうしても忘れられない。

「A、ぼうっとしてると危ねぇですぜ」
「す…すみません」

隊長の声がすぐ後ろで聞こえて思わず持っていた資料を落とした。
一々距離が近いんだよ最近っ！

「あーあ、何やってるんでィ」

なんだかんだ隊長も一緒に拾ってくれるみたいで、謝罪の言葉を口にしながらバラバラになった資料を集める。
書類を集め終わり、隊長が集めた分の書類を受け取ると手に触れられてどきりと心臓が鳴った。

「…A、」
「は…はい」

思わず身を引こうとして背後の書類を保管している棚に背中が当たった。
隊長は私が身を引いた事を気に入らなかったようで更にずいと寄ってくる。
近いっ！

「A」

隊長の声が耳に入り頭をおかしくさせた。
変に熱を持ってしまった私の顔に隊長は指を添える。

「…っ、た…たいちょ…」
「ん？なに、A」

いやなにはこっちの台詞なんだよ何？！何なのっ？！

「……くっ。顔、超真っ赤」

少し笑って離れた隊長は、さっさと目的の資料見つけてくだせェとそう言って踵を返した。
姿が見えなくなってからずるずると地面に座り込む。

…最近、隊長の様子がおかしい。
最近というか……あの病院の日から明らかにおかしい。
隊長の中で一体なにがあったんだ…？？



「Aー、肩揉んでくだせェ」
「またですか…？いいですけど…」

夜、布団を敷き終わった後隊長にそう声をかけられて自分の布団に寝転んでいる隊長の方を見た。
既にうつ伏せに寝転んでいて、さっさとやれと言わんばかりにしている。
その肩に手を添えて指圧すると妙なうめき声を上げ始めた。

「うぐ…っ。いっ…」
「ここが痛いんです？」
「あー…マジ痛い…うっ」

隊長はよくバズーカ持ってるからなあ…結構肩が凝っていることが多い。
私としては隊長に触れているというだけで色々、本当に色々大変だ。


ある程度指圧に慣れてきたのか、ぐったりした隊長が「きもちいいー」と気の抜けた声をもらした。
それに思わず息をのむ。

…いや違う今なに考えた私。

「Aにも、やってやろうかィ…？」
「遠慮します必要ありません」
「チッ」

…やっぱり、最近の隊長はおかしい。
前みたいに、パンダって呼ばなくなった。
代わりに私の名前をしょっちゅう呼ぶ。

「…隊長、出来ればパンダって呼びませんか」
「絶対嫌でィ」

……名前を、あまり呼ばないでほしいのに。

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