Lifesaving - 感じる鼓動 - 7章

・ LIFE ３０１ ページ20

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同期2人の命を現場で落としかけ、その2人を大切だと思う大切な人の、心を傷つけた。もちろん、自分の心も。




それぞれにある過去のことがあるからこそ余計深く考えてしまい辛いのだ。




その現実はまるで植物の棘の如く心に強く絡みつき、中々取れない痼のようなものになって白石の心に住み着いていた。




それを知っているからこそ、灰谷はその言葉の重さを分かっている。




すぅ、と大きく息を吸った白石はわざと明るく言う。





白石｢私ね、灰谷先生と同じフェロー1年目の時、……大きなミスをしたの。｣


灰谷｢え、？｣


白石｢取り返しがつかないミス。……その人の人生さえ、壊すような。

そのせいで信頼する同僚に尊敬する指導医の腕を切り落とさせることになった。｣





ハッ、と灰谷の息を呑む音が聞こえて、その2人の空気感が若干強ばった。





白石｢それで、何もかもが嫌になった。仕事ができない自分も、肝心な時に臆病になる自分も、現実を直視できない弱い自分も。

……医者をやめようとも思った。

でもねらそんな時みんなが側にいてくれたの。頑張れとか、励ますわけでもなく、大変ねと同情するわけでもなく、ただそばにいてくれた。

それで私は現場から逃げ出さずに進んだ。｣





あの時のことを思い出してふと笑う白石。





白石｢みんながいるから、……患者さんの前から逃げずに済んだ。｣





目線を下げていた灰谷の目はいつの間にか上を向いていていた。





白石｢灰谷先生？あなたのそばには同じように医師として自分の人生に悩む同僚たちがいる。

あなたに救われ、感謝している患者もいる。

そしてあなたの成長を楽しみにしている指導医もいる。

それは私だけどね？(笑)｣





おどけて見せる白石に灰谷は言葉の重さを実感する。





白石｢あなたは独りじゃないから。ゆっくりでいい。

焦らずに灰谷先生のやり方で、歩き方で、医者になればいい。

灰谷先生はきっと人の役に立つ医者になる。｣




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