ハロウィンにはイタズラを(乙)04 ページ32
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「Trick or Treat!」
「うおっ! …ってもう…驚かさないでよ」
おついちさんはやれやれといった顔をしながら言う。
「てかAちゃん、ちゃんと仮装までしてるのね。 それは…吸血鬼?」
「あ、正解! よくわかったね」
私は今髪留めで装着出来るミニシルクハットと黒のマント、会社で着ているワイシャツに私服用の膝下丈スカートを身に付けて吸血鬼をイメージした仮装をしている。
「なんとなくそうかなって。 あっ、お菓子だよね?」
おついちさんは持っていた通勤用鞄を開けてお菓子を出そうとする。
「…あれ? おっかしいなぁ…あー、事務所に置いてきちゃったかもなぁ」
「あらら、じゃあ明日でも──」
「これじゃあイタズラされちゃうなぁ。 イタズラはやだしなぁ…あ、そうだ!」
私の言葉を聞かずに彼は話を続けた後、突然私の両肩をガシッと掴んだ。
「今Aちゃんは吸血鬼なんだよね? イタズラされるのは嫌だから代わりに首噛んでよ」
「へ!? いやいや…お菓子なら明日でいいしイタズラもしないから!」
そう言いながら私は後ろへ下がろうとするが、肩を掴む彼の手の力は弱まらないし、なんなら楽しそうな顔をしている彼。
(絶対私の反応を見て楽しんでる…)
この状況を終わらせるためには私からアクションを起こすしかなく、私はゆっくり顔をおついちさんの首筋に近付ける。
(どっちがイタズラされてるかわからないじゃん…)
そして私は意を決して、彼の首筋に歯を立てないように噛み、数秒してすぐ彼の身体から離れた。
「…」
恥ずかしくて無言のままでいると、おついちさんは鞄から何かを取り出して私に渡す。
「はい、よくできました。 それじゃ着替えてくるね」
「! ちょっ、これ…」
私は自室に向かうおついちさんを呼び止めようとしたが、彼はこちらを向いてにこっとだけして自室に入って行ってしまった。
「…お菓子、あったんじゃん」
私は顔を赤くしながら独り言を零したのであった。
(乙)END.
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作者名:くろいつき | 作成日時:2020年4月15日 0時