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……SIDE IS リヴァイ……
Aがイルゼ・ラングナーに対して持っていた友情にも、嘘は見えなかった。
イルゼの遺体を前にしたAの動揺も、苦しみも、涙も・・・
コイツはイルゼの安否がまだわからなった時、自分だけが幸福な時間を過ごすことに負い目を感じていた。
イルゼの死が明らかになってしばらくしても、Aはまだイルゼの死にとらわれ、悲しみ続けていた。
訓練中に岩場から落ち、ジャンに助けられた時だ。
それほどに思う友・・・偽りの心で、そんな友情が育つとは思えねぇ。
オレの中で、孤独とともに生き続ける友の顔が浮かぶ。
そうだろ?ファーラン、イザベル・・・
それに・・・あの力のことも、オレはずっと気になっていた。
あれは誰にでもできることじゃねぇ。
あの速さ、あの動き・・・
幼少期に過ごしたケニーと似た何かを感じた。
Aの話している、王のボディーガードだったというその種族・・・
憲兵団に所属するケニー・・・
何か、どこかに繋がりがあるように思えてならねぇ。
いや、待て・・・
『マーレがこの島を滅ぼそうとするのは時間の問題・・・それを報せに来た』
なら、なぜもっと早くそれを話さなかったのか。
Aの話の中で、オレはそこに疑問をいだいた。
だがその強い使命の挫折理由も、Aが素直に
それは、Aにとって唯一の家族であるマルレーンが、初めて持つことができた幸せを壊すことができなかったためだ。
その後もマルレーンを失ったエルヴィンの悲しみに追い討ちをかけることもできず、自分たち姉妹がマーレから来たとは言い出せなかった。
そして今度は、自分のつかんだ幸福の前で足をすくませていた。
その己の弱さの前で、Aは自分の使命がうずくまるのを見ているしかできなかったのだろう。
1人で涙を流すたびに、その使命を果たせない自分の弱さを嘆いていたのだろう。
オレは・・・・・・・・・
コイツを信じるとか信じねぇとか・・・それに意味はない。
オレが見たものを信じる。
オレが信じたものを見る。
それだけだ。
コイツが己と壁の中の自由を願っていることを、オレはこの目で見てきた。
それが紛れもない真実だ。
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作者名:ico | 作成日時:2018年1月21日 8時