18 ページ18
*
小屋へ帰ると、夕飯のいい匂いがした。
ここは、仕事場であり、あたしの住み家でもある。
食堂で、ゲレオンさんとユッタが、食事の用意をしているのが見えた。
ゲレオンさんはここのオーナーで、獣医。
馬の様子がおかしいときは、いつでも診て、的確な指示をくれる。
初老だけど、すごく元気だしすごく優しい。
フサフサの白髪頭が印象的。
あたしがここへ来たときのこと、よく覚えてる。
気まずそうにしているあたしに、ゲレオンさんは
『急に大きな娘ができたようで嬉しいじゃないか』
そう言って、ガハハと笑った。
ユッタはまだ15歳の少女で、あたしの妹みたいな存在だ。
ガサツな私と違って、おとなしくて可憐な雰囲気。
髪も柔らかくて栗色で、賢そうな切れ長の目。
調査兵団には行かないタイプの子だ。
彼女はこの馬小屋での料理担当。
馬のエサも、彼女が管理してる。
栄養士になるって言って勉強してる、すっごく真面目な子。
ここにいるみんなには、肉親がいない。
だから、お互いを家族のように大切にしながら過ごしてる。
ん?イザークの姿がないな・・・
事務作業まだ終わんないのかな。
あたしが書くはずの日報、頼んじゃったもんな・・・
事務室へ向かうと、案の定、イザークはまだ机に向かっていた。
その姿を見つめながら、イザークとの出会いを思い出す。
3年前、ここへ来たときのあたしは心身ともに弱っていた。
お姉ちゃんを亡くして、兵団からも追いやられ、まだ完治しない身体を引きずって・・・
何を目標に生きればいいか、わからなくなっていた。
イザークは、そんなあたしに毎日、ただただ仕事を熱心に教えてくれた。
あたしの過去にふれようとしたり、調査兵団のことを聞き出そうとしたり、そんなことを一切しなかった。
本当に、ただただ、仕事の話や馬のこと、ここにいる人たちのことを話してくれた。
その時からずっとずっと、あたしはイザークに甘えてる。
優しくてあたたかくて、お姉ちゃんがもし男だったら、あんなふうかもしれない、なんて思っちゃうくらいに、すべて受け入れてくれるから・・・
「・・・お疲れさま」
あたしはイザークを驚かせないように、控えめに声をかけた。
*
247人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
萌(プロフ) - 頑張ってください〜 (2017年10月8日 19時) (レス) id: 8d86d6f3b5 (このIDを非表示/違反報告)
いこ先生(プロフ) - 萌さん» 萌さん♪♪ ありがとうございます!めっちゃ頑張ります〜(>▽<)/ (2017年10月7日 8時) (レス) id: ba96530b2c (このIDを非表示/違反報告)
萌(プロフ) - 面白いです!頑張ってください! (2017年10月7日 0時) (レス) id: 8d86d6f3b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ico | 作成日時:2017年10月6日 23時