３８ ページ38
*
シャワー室で涙が出なくなるほど泣いたはずだった。
それでも、まだ涙は隠れてた･･･
屋上に吹いた優しすぎる風が、彼らの思い出を運んだ。
彼らがあたしにくれた優しさと同じくらいの透明感と温もりに満ちたこんな風、今まで出会ったことがない。
4人の優しい気配に胸を貫かれ、あたしは頭から被った毛布を隠れみのにして、泣きだしそうな自分を閉じ込めようと強く布を体へ引き寄せた。
思い出の中の彼らがひとりでに声をかけてくる。
『泣き虫野郎だな』
オルオ･･･
『おれたちはやり遂げたんだ、そうだろ？』
グンタ･･･
『おいて行って悪いな、A。頼んだぞ』
エルド･･･
『A、やるべきことは目の前の人と一緒に、全てを乗り越えることだよ』
ペトラ･･･
どんなに強く目蓋を閉じても、涙が溢れてきてしまう。
あの時、間に合わなかった･･･
あたしはあの時、女型を追って森の中を一心不乱に駆け抜けた。
ミケの嗅覚は本物。
女型がすぐそこにいることは、もう足音や叫び声がなくてもわかっていた。
でも、巨人化したエレンのうなり声がした時には、もう、遅かった･･･
*
あたしが愛馬の脚を止めたのは、血まみれのリヴァイが気を失ったエレンを抱えているのを見た時だった。
リヴァイのそばには、同じように返り血を浴びた様子のミカサがいた。
『リヴァイ････ミカサ･･･』
リ『なぜお前がここにいる』
『エルヴィンから･･･指示が･･･』
リ『そうか。見ての通りエレンは救出した。ヤツはあっちで脱力している。回復する前にズラかるぞ』
『了解･･･。････？待って･･･リヴァイ･･･』
何かが欠けてる･･･あたしは直感的にそう思った。
『ペトラ･･･たちは･･････』
聞きながら、悪い予感がした。
リ『ここに来るまでに見なかったのか。あぁ･･･馬で走ってきたんだったな、気づけなくて当然か･･･死んでたからな』
死･･････
『･･････!!』
あたしは自分の後ろに広がる森を振り返った。
そこには、しんと静まり返り、大きく聳え立つだけの木々の群れしか見えなかった。
リ『行くぞ』
そう言ってアンカーを飛ばすリヴァイの後ろを、ミカサがついていった。
*
心臓がぎゅっと激しく絞られたような息苦しさを思い出し、あたしはストールの中で
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ico(プロフ) - カレンさん» 嬉しいご感想ありがとうございます！励みを頂き力が湧きます！頑張ります！ (2018年6月20日 15時) (
レス) id: ba96530b2c (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - とっても面白いです！これからも頑張って下さい！ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 5dabf5f2d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ico | 作成日時：2018年6月9日 14時
