検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:11,831 hit

第13話〜動け、そして離れろ〜 ページ16

『挨拶を忘れていたよ。僕は希久弥颯天。元妖精族で今はなんでもないんだ』

颯天と名乗る男は、少しずつ私に近付いて来る。

元妖精族?

今はなんでもない?

そう考えれば考える程、目の前の男が不思議な存在に思えて来る。

すると

『大丈夫?立てるかな?』

颯天が私に向かって、手を差し伸ばして来た。


駄目だ。


理性では、理解しようとしているのに。


過去の、記憶が私の本能を震えさせる。



私は、致命傷を負った身体で颯天から離れた。

身体の至るところから、悲鳴が聞こえる。


そして




グジュ……


音を立てて、傷口から、とんでもない量の血液が溢れ出した。

「くっ……」

私は激痛に顔を歪めながら、地面に倒れ込んだ。

『凄いな、それだけの致命傷を負っておきながらその動きの素早さ……ただ者じゃ無いみたいだね……』




颯天が一歩ずつ、ゆっくりと私に近付く。



『でも、君の身体はボロボロなんだ。無理をしたら駄目だ』



怪しい雰囲気とは対照的な優しい声が、妙に私の鼓膜を震えさせる。




あぁ、その声に、私の身体を預けたならどんなに楽だろう。



疼く頭の片隅で、そんな事を考えた。



でもその考えは、簡単に黒い過去に塗り潰されてしまった。




信じたら




駄目だ


信用すればする程



裏切られた時の悲しみは大きくなる。




動け、私の身体。


今すぐ、この男から離れろ。



動け、動け、動け、動け、動け!





どれだけ理性が本能に呼び掛けようとも、本能がそれに応える事はなかった。




頭の裏と胸の奥に冷たい何かが広がるのを感じながら







見えない何かに助けを求める様に歪む視界に手を伸ばした。








私…………死にたく…ない。




でももう、身体は動かなかった。


鉛の様に重く、冷たかった。




私は淡い絶望を噛み締めると、どこか遠くへ



遠くへ






意識を手放していた。

第14話〜魔力の限界と魔術師の覚悟〜→←第12話〜助けられた?〜



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.1/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , 同作 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ロリコンサンダー(仮) - うらみん PC垢さん» すみません!携帯とか成績とか精神が壊れていたせいで、更新が止まってしまい申し訳ございません。 (2019年11月25日 17時) (レス) id: 726db12174 (このIDを非表示/違反報告)
うらみん PC垢 - 更新楽しみに待ってます (2019年10月25日 20時) (レス) id: 57acaff2a1 (このIDを非表示/違反報告)
ロリコンサンダー - アエルさん» ありがとうございます……わ、わたしも……ポッ←すみませんwそういって頂けて嬉しいです! (2019年9月12日 18時) (レス) id: 6a276d2734 (このIDを非表示/違反報告)
ロリコンサンダー - しーずんぺろ子さん» そっ、それなぁ!?あ、ありがとうございます………(照) (2019年9月12日 18時) (レス) id: 6a276d2734 (このIDを非表示/違反報告)
ロリコンサンダー - べのむさん» え、えええええええええぇぇええええ!?!?!?!?ありがとうございますぅううう??? (2019年9月12日 18時) (レス) id: 6a276d2734 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:莉愛&ロリコンサンダー | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2018年12月29日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。