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羽鳥は、至って平凡なサラリーマンと主婦の間に生まれた、至って普通の子供だった。
特別秀でてる才能がある訳でもなく、かと言って誰かより何かが劣っている訳でもない、何処にでもいる平凡な女の子だ。
そんな羽鳥が自らの体の異変に気づいたのは、小学校三年生の時だった。
なんだか……胸が、重い。
初めをそれ意識し始めたのは体育の授業の時だ。走る時、胸がやたらと揺れて痛くなった。その時既に掌にギリギリ収まるくらいにまで成長していた羽鳥の胸部は、支えが無いと不必要に揺れて痛みを生んだ。
母親に相談すると、直ぐにスポーツブラというものを買い与えてくれた。それがあると少しだけマシになるので、羽鳥は毎日学校に着けていくようになった。
その次の体育の授業の日、教室で着替えている羽鳥を、クラスの目立つグループの女子達がひそひそと見ていた。
「Aちゃん、もうブラジャーしてる」
「変態だからじゃない」
くすくすと遠目に笑われて、それがいい感情ではないことも何となくわかっていた。
ブラジャーを付けただけで変態って、なんでだろう。ただこれが無いと胸が痛くて仕方ないから付けてるだけなのに。
身につけたスポーツブラを隠すように急いで体操服を着て、体育の授業に向かう。教師の指示に従って整列していると、今度は男子グループが羽鳥を見ながらゲラゲラと笑い声を上げている。
「チチでか星人だ!」
「そうだ、チチでか星人だ!」
胸の大きな羽鳥をからかうような下品な言葉だった。まだ幼い子供だからこそ、羽鳥を思いやることなくいっそ残酷なまでに大きな声で、何度も何度も楽しげにその言葉を繰り返す。
くすり、と誰かが笑うと、その笑いがどんどん他の生徒たちにも伝染していく。
羽鳥は無意識に、胸を覆って隠した。恥ずかしくて、恥ずかしくて、慌ててその場を逃げ出した。
この大きな胸は恥ずかしいものなんだ。悪いものなんだ。
羽鳥はその日から、クラスに行けなくなった。
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綾鷹(プロフ) - どハマり中の作品!更新頑張ってください!!応援してます!!! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 1e5c1477e1 (このIDを非表示/違反報告)
おかかのおにぎり(プロフ) - 初コメ失礼致します。すごく素敵な作品に出会えて大感激です…!三ツ谷のかっこよさと可愛さが全面に押し出されててめっちゃ好きです、、、これからも更新応援してます! (2021年8月17日 8時) (レス) id: bb984743a2 (このIDを非表示/違反報告)
まつあい(プロフ) - めちゃくちゃ好きです…泣 (2021年8月17日 5時) (レス) id: 616babd1d8 (このIDを非表示/違反報告)
愛月咲良(プロフ) - この作品に会えた事を感謝します… (2021年8月17日 4時) (レス) id: 4a6d894003 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年8月17日 1時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:金蔓ゆるり | 作成日時:2021年8月16日 5時