【文スト】ふぅん、私に逆らうんだ？【太宰治】

57#絶対 ページ13

此の余裕綽々な包帯野郎とは違い、

私は全身、主に脚の震えが止まらない。

周りの人がいたら、此処は雪国かと錯覚する程に。


『もうやだ帰るぅぅぅああああ』


「何奇声上げてるの。さ、おいで。」


私の数歩先で微笑む。

阿呆。この人は阿呆だ。

今心の中で全力で呪っている。

もし此奴に異能無効化さえなければ、異能で外に強制退出も出来たのに。

助けてお兄ちゃん！！

…と云う血の叫びも虚しく。

いやいや、自分でも五月蝿い事はよく判っているけど。

怖いんだからさ、仕方ないよね。

全く。

いいよね、太宰は男だし。

行方不明になるのは女性だし。

…関係、ないもんね。

仮に何かあったとして、その被害者は私だ。


「置いてくよ？ほら。」


そう云って、

Shall we dance?(一緒に踊りませんか?)

とでも云うように、華麗に差し出された左手。

連想するのは王子様。

…そう。当に、あの日のようで。

素直に私の右手を、彼の骨張った手に重ねる。

そして急に手を握られ、其の儘彼に胸に引き寄せられる。


「安心し給え。Aの事は、私が行方不明になんてさせない。」


初めは、ふわりと包み込むように。

そして次第に強く抱き締められる。


『…ん。約束、だよ。』


その細く長い指と、私の指を絡める。

二人の証。

私から君への、“絶対”の証。


「離れたら、お仕置きだからね。」


『判ってるよ、大丈夫。太宰に気を付けるから。』


「酷いっ！」


…なぁーんて云って、手を繋ぎながら並んで歩いていたのが、

つい数分前。


『だっ、太宰ぃぃぃぃ…』


何があったのか、ふと気付いた時にはもう隣に君は居なかった。

まるで、神隠しじゃないか。

その上、演出という名の仕掛けなのか風なのか、

埃を被り、ひび割れている窓は時々ガタガタと不気味に音を立てる。

少し音が聴こえるだけでも肩が跳ねる。

私を今支配するのは、恐怖。

先刻まで確かにあった其の温もりは、

握り拳を作ってみても、少しも感じられなかった。

その拳で掴んだのは、虚無。

心なしか冷たく感じる空気。

嗚呼、待って、一人にしないでよ。


『…一人は、厭(や)だよ。』


その場から動く勇気すらない私は、

しゃがみ込み、彼の姿が現れるのを待つしかなかった。




＊ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＊

放置してたらデータ飛んだ(死)

…更新頑張ります。

58#心配→←56#違和感

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーカラー

あずきいろ

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした！

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す