【文スト】私が絶対に決まってるだろう？【太宰治】

命令 ページ9

太宰さんの口から出たのは、勿論あの話についてだった。


「ねぇA、何でもしてくれるんだよね？」


入水以外ならね。一度だけ、深く頷いて見せる。

何時もより色っぽく、そして妖しく笑う上司。

依然として手は離して呉れない。

二人きりの静かな空間、だからかもしれない。

心臓の音がやけに五月蝿いなぁ。


「じゃあさ、私の恋人になってよ。」


『……は？』


思わず今日一番の素っ頓狂な声をあげてしまった。

え、何て？え？ こ い び と ？


「それと…私に従え。」


目に光がありませんこの上司。

鏡見た方が善いよ、凄い笑顔ドス黒いから。

でも、此方にも拒否権が____


「ま、拒否権何て無いんだけど。」


______たった今、奪われました。

心做しか満足そうに笑ってません？この人。

否でも応でも、って感じだよ、、


「厭だとは云わせないよ？…善いね？」


『……はい。』


この状況って、ゲェムでいう

▶はい
▶はい

みたいな、選択肢にNOが存在しないやつと同じだよね。

この自 殺愛好家の包帯ぐるぐる莫迦上司め。

職権乱用って云うんじゃないかな、こういうの。


「ふふっ、恨むなら何でもする、って云った自分を恨みなよ。」


くすくす、っと笑う。そんなところは実に可愛らしいけど。

可愛いとか云ってる余裕は無い。

其れに、ごもっともだ。

そして早速ご命令。

恋人らしく。さん付けは厳禁。出来るだけ太宰さんに敬語を遣わない。

もし其の決まりを破ったら……お仕置き。

敬語は上司だから見逃して、と云ってみた結果。

他はこれ以上軽くはならない。そりゃ残念。

それどころか突っ込みどころも満載なのだけれど。

其の一、恋人らしくって何ですか
其のニ、恋人はさん付けじゃ駄目なんですか
其の三、お仕置きって何ですか
其の四、何故私が恋人なんですか
其の五、矢っ張りお仕置きって何ですか

掴まれた儘だった手を、

Shall we dance?

的な感じで、太宰さんの大きくて綺麗な手に、私の小さい手が乗せられたような状態に。

そして繋がれた手を彼は私の顔の高さ迄下から押し上げるようにする。

艶やかに微笑み、私の手の甲に優しく_____




_____接吻をした。

努力→←憂鬱

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