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五十二言目 ページ7

中也side

苦しそうに息をするAの表情は嬉しそうだった。
人の首ってこんな力で締まるものなのか、と思いながらAの力無くぶら下げる腕を見た。
そろそろやめないと本当に彼女が死んでしまう。
なのにそれが一層自分の中の独占欲を煽る。
このまま殺してしまえば彼女は自分だけのものになる。
でも彼女が死ぬなんて耐えられない。
変な感覚。昂揚感なんて言葉じゃ収まらないかもしれない。
彼女の体が後ろに傾き出す。
首から手を離し体を支える。
浅く呼吸をしている彼女を見て笑いが込上げてきた。
それと同時に怖くなった。
彼女が死んでしまうかもしれないという恐怖。
自分の手から離れて行かなくなる彼女という幻想。


見える形でAを独占したい。


暫くして呼吸が戻ると彼女は目を開けた。

貴方「……殺してくれて良かったのに」

中也「危なくそうする所だった。でもまだ死なれちゃ困るからな」

貴方「何が困るの」

中也「足りねェんだよ。そんな独占の仕方じゃァ満足し切れねェ。生きてもう少し俺の我儘に付き合ッて呉れよ」

怒るかと思えば意外にもAはくすくすと笑った。

貴方「そうね。そうだった。中也ってそういう人だもんね」

中也「何だ?」

貴方「そう簡単に殺してくれないのはわかってたよ。だって私の好きになった人だもん。貪欲でいてくれなきゃ」

中也「やけに上機嫌だな」

貴方「中也の手で一回死んだって思う事にしたの。そうすればお互い願った通りでしょ?私は望む死に方ができて、中也は私を独占できる」

俺の腕の中でそう言い切るA。
その首には薄っすらと先刻の俺の手の跡がついていた。
おかしいかもしれねェが、とんでもなく興奮する。
首筋に接吻をする。俺の髪を梳くように撫でるAの手が煽ってる様に感じた。もう止まれない。

貴方「がっつかなくても逃げたりしないよ」

中也「もう我慢できねェ。良いだろ」

貴方「良いよ。でも、ちゃんと寝台行こうね」

俺の手を引いてソファーから立つ。
部屋までの長さ。その僅か数分、数十秒すらも惜しい。
ずっと触れていたい。
あの目に俺だけを映していたい。
今まで我慢していた全てが許容範囲を超えて迫ってくる。
明日どうなってるとか、何回抱くとかそんなことどうだっていい。
ただ俺の中の全てがAを欲している。
こんな感覚は初めてだった。


やっぱりAは俺にとって特別な女だ。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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鶴媛(プロフ) - 紅野さん» わぁ!ありがとうございます!!お忙しいのに私の勘違いですみません!更新嬉しかったです、暑い日が続きますがどうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年8月18日 1時) (レス) id: dda77e3f70 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます。いえいえ!忙しくて更新が止まってしまっただけです!また空いてる時間で更新するのでご安心を…! (2020年8月18日 0時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - え、八十五話で終わりなんですか?かなり気になるところで終わってしまって少し残念に思います (2020年8月17日 4時) (レス) id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 橘明音さん» ありがとうございます。そう思ってもらえて良かったです。ゆっくりですが頑張りますね。 (2020年3月2日 11時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
橘明音(プロフ) - 最後のコメントありがとうございます。 私は受験終わったけど学校なくて本当に暇だったのでそう言って書いてくださること、本当に嬉しいです!更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2020年3月1日 23時) (レス) id: 0fca2029db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2019年2月6日 15時

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