六十九言目 ページ24
中也side
助けてくれと言う瑞希をどうしたものかと考え、行き着いた結果が連れて行く事だった。
とりあえず俺と一緒に居れば安全だろうし、俺はAを探せる。
だが困った事に何時もの川にはいなかった。
家にもいない。
太宰の野郎に助けを求めるのも癪だが、Aの事を考えるとそれも視野に入れなくてはならない。
頼むから生きててくれ。
そう願うばかりだった。
海岸沿いの倉庫街。
奥に行けば行くほど人気が無くなる。
瑞希「幹部、どこまで行くんですか。これ以上先なんて何も無いですよ」
中也「だからこそ、だろ。一人で死のうとしてるかもしれねェ」
瑞希「あの人がそう簡単に死ぬ筈ありませんよ」
そう言って彼女は笑った。
コイツが俺に向けてる情は理解してる。
それを察せない程鈍感ではない心算だ。
だが、そろそろ言うべきだな。
俺が好きになれるのはAだけだ。
中也「手前は分かってねェンだよ。Aの事。そうだろ?」
瑞希「まぁそりゃここ最近一緒に働くようになったばかりですからね。でも幹部も大して変わらないでしょう?上西さん割と昔からいるそうですけど、幹部と仕事以外の話してるの見た事ありませんし」
チラッと此方を見る。
その仕草もきっと計算してやってる。
違う。
中也「……手前とは違ェ。アイツは。基本的に仕事中は顔に出さねェんだ。思った事。まァ、家でもか。昔から誤魔化すの得意だからな」
瑞希「昔ってどのくらい前の話ですか?」
中也「五年くらいか?まァ手前がマフィアに来る前なのは確かだ」
瑞希「……幹部、今家でもって言いました?」
中也「あァ言ったな」
瑞希「どういう事ですか…?まさか同棲してるなんて言いませんよね…?」
中也「そのまさか、だ。もう四年になるな」
瑞希「付き合ってるって事、ですか…?」
少し涙ぐんだ声。
こいつを苦しめたい訳じゃない。
唯、Aを取るならその道は通らなくてはならない。
瑞希「どうして…。幹部、何で上西さんなんですか」
中也「何でだろうな。本能的にAだッて思ったからじゃねェか?」
瑞希「そんな…、そんなの酷いです…!」
涙が落ちていく。
女の流す涙は嫌いじゃない。
が、Aは瑞希の何倍も綺麗に泣く。
静かに、何処か遠くに何かがあるかの様に。
Aは哀しき渡り鳥だ。
先生の所から太宰に、太宰の所から一人で彷徨い、傷ついた所を俺が拾った。
その傷は未だに癒えてない。
俺は一生腕の中で飼う心算だ。
傷つかない様に。
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鶴媛(プロフ) - 紅野さん» わぁ!ありがとうございます!!お忙しいのに私の勘違いですみません!更新嬉しかったです、暑い日が続きますがどうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年8月18日 1時) (レス) id: dda77e3f70 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます。いえいえ!忙しくて更新が止まってしまっただけです!また空いてる時間で更新するのでご安心を…! (2020年8月18日 0時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - え、八十五話で終わりなんですか?かなり気になるところで終わってしまって少し残念に思います (2020年8月17日 4時) (レス) id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 橘明音さん» ありがとうございます。そう思ってもらえて良かったです。ゆっくりですが頑張りますね。 (2020年3月2日 11時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
橘明音(プロフ) - 最後のコメントありがとうございます。 私は受験終わったけど学校なくて本当に暇だったのでそう言って書いてくださること、本当に嬉しいです!更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2020年3月1日 23時) (レス) id: 0fca2029db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅野 | 作成日時:2019年2月6日 15時