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四十八言目 ページ3

紅葉「随分と穏やかじゃのぅ」

あの部屋に向かう途中、ふと隣を歩いていた姐さんがにこやかに言った。

貴方「何がです?」

紅葉「お主の表情じゃ。普通、こんな日は震える程緊張するものであろう?」

貴方「朝はそうでした。でも中也がそれをふっ飛ばしてくれたんで」

あの後から気持ちが楽になった。
焦ってるのは私だけじゃない。
中也も私を補佐にすべく悩みに悩んでいるんだ。
だから私ばっかりが必死にならなくてもいい。
そう思えたから。

紅葉「全く、前の態度はどうしたのじゃ。あれ程悩んでおいて。私がどれだけ耳を塞ぎたかった事か」

中也「姐さん、その話今は止めて下さい」

今まで黙って後ろを歩いていた中也が姐さんの言葉に反応して慌てたように言った。

紅葉「Aに全部聞かせても良いのかえ?」

貴方「何の話ですか?」

中也「手前は知らなくていい」

隠したいことなのはバレバレだけど、姐さんが面白がってる所を見ると悪いことじゃなさそうだ。

紅葉「今度ゆっくりその事について話そうではないか。Aや」

中也「姐さん……!」

貴方「姐さんの誘いなら」

中也「頼むから聞かないで呉れ」

諦めたような、でも本当は止めてほしいようなそんな声に少し笑ってしまった。

そうしている内にとうとう部屋は目の前だった。

紅葉「準備は良いかえ?」

姐さんの問いに一つ息を吐いて頷くと扉が開けられた。
目に入ったのは姐さんの部下数人と怪我をしている繋がれた男が一人。
部下数人が此方に気づいて頭を下げる。
その隙をついて繋がれた男が口を開いた。

「何だ、小娘。お前に何ができる。俺は絶対に口を割る気はない。ほら、殺してみろ」

馬鹿みたいな挑発。
それを聞いて一発部下が殴った。
そんなの何の効果もない。
異能を開放して耳を澄ませる。
聞こえてくるのはただの挑発と罵倒だけ。
私はこいつから組織のトップが何処に隠れたか聞き出さなきゃいけない。

罵倒、挑発、銃声、色々な音を聞きながら暫く黙って耳を澄ませていると姐さんが口を開いた。

紅葉「何か聞こえたかえ」

貴方「いえ、何も。でもすぐにわかります。ちょっと待ってて下さい」

姐さんの不思議そうにする表情を見て、部下達に一度やめるよう言った。

「怖くなったか?お前みたいな小娘が人の死ぬ所なんか見たことあるわけねぇよな」

そんな挑発を聞こえないふりをして目を瞑った。
一つの深呼吸をして繰り返す。大丈夫と。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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鶴媛(プロフ) - 紅野さん» わぁ!ありがとうございます!!お忙しいのに私の勘違いですみません!更新嬉しかったです、暑い日が続きますがどうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年8月18日 1時) (レス) id: dda77e3f70 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます。いえいえ!忙しくて更新が止まってしまっただけです!また空いてる時間で更新するのでご安心を…! (2020年8月18日 0時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - え、八十五話で終わりなんですか?かなり気になるところで終わってしまって少し残念に思います (2020年8月17日 4時) (レス) id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 橘明音さん» ありがとうございます。そう思ってもらえて良かったです。ゆっくりですが頑張りますね。 (2020年3月2日 11時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
橘明音(プロフ) - 最後のコメントありがとうございます。 私は受験終わったけど学校なくて本当に暇だったのでそう言って書いてくださること、本当に嬉しいです!更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2020年3月1日 23時) (レス) id: 0fca2029db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2019年2月6日 15時

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