【文スト】帽子幹部は私にだけ口数が少なかった筈なのに…【中原中也】

五十八言目 ページ13

中也に席を外せと言われた。
遠回しに。きっと菊池さんと何か話をしたかったんだろう。

姐さんの部屋に来た私は座布団を枕にして寝ていた。
そろそろ本当に身体が辛くなってきた。
だってあれだけの事をしたら私じゃなくても身体おかしくなるって。

貴方「あー、かっこよかった」

紅葉「惚気なら他所でやったらどうじゃ」

貴方「あ、姐さん、首領に言ったの姐さんでしょう？」

紅葉「言って悪い事ではなかろう？」

貴方「まぁそうですけどぉ……」

歯切れの悪い返事をすると姐さんは溜息を吐いた。

紅葉「良いのか？言わぬと中也に近づく女も減らぬぞ」

貴方「………中也ってそんなにモテるんですか？」

紅葉「顔も性格も悪くは無いからのぅ。事務の子達にはかなり人気があるそうじゃ」

貴方「やだぁ！中也は私のなのー！」

座布団に顔を埋めて叫ぶように言うと姐さんに五月蝿い！と一喝された。

紅葉「そう言う割に公言しないのはお主であろう」

貴方「だって、仕事に支障出たら大変だし、恥ずかしいし……」

紅葉「恥ずかしいじゃと？」

姐さんの問いに答えようと口を開いた時、部屋にコンコンとノック音が響いた。
失礼します、と言う声と共に入って来た中也は私を見ると小さく微笑んだ。

中也「悪いな、部屋借りちまッて」

貴方「ううん。何か話したい事でもあったんでしょ？」

中也「まァな」

紅葉「Aを追い出さんでも自分の執務室で話せばよかろう」

中也「それはちょっと……。瑞希がいるンで」

瑞希さんがいると話せない事。
私の事、かな。
起き上がって飲みかけのお茶を飲む。

貴方「戻って部屋片付けますね。お邪魔しました」

中也「俺も手伝う」

紅葉「早く終わらせて早く帰ったらどうじゃ。体を休ませるのも大切であろう」

口元は袖で隠しているが目が少しニヤニヤとしている。
うわ、バレてる。

中也「そうさせます」

あからさまに目を背ける中也。
ちょっと耳が赤い。
良かった。ちゃんと意識してくれてる。
恥ずかしいのは私も同じだけど、それ以上に彼が私を好きでいてくれてる事が嬉しい。

部屋を出て少し歩いた所で、隣を歩く彼の腕に抱き着いてみた。
顔を覗き見れば少し見開いた目と視線が合った。

中也「どうした。珍しいな」

貴方「接吻、したくなっちゃった」

中也「煽んなよ」

貴方「普段中也だって言うじゃん」

中也「……部屋戻ったらな」

それだけ言って私の頭を撫でた。

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