【文スト】帽子幹部は私にだけ口数が少なかった筈なのに…【中原中也】

五十五言目 ページ10

NOside

高そうなソファーが並ぶ部屋。
人形のような金髪の幼女、エリスがケーキを頬張る隣にはマフィアの首領、森が難しい顔をして座っていた。
その向かいには楽しそうにお茶を飲む尾崎紅葉がいる。

森「やっぱり何かあったのだろうか」

紅葉「何かあれば連絡をしてくるものであろう」

森「連絡の出来ない状況だとしたら」

紅葉「ある意味連絡の出来ない状況かもしれぬ」

ニコニコと答える紅葉に森は違和感を持った。

森「何か知ってるのかい？紅葉君」

紅葉「予想にすぎぬ。確実に近い予想じゃ」

森「何だい、それは」

紅葉「秘密じゃ」

袖で口元を隠し、楽しげに笑う姿はマフィアという言葉からは縁遠いものに見えた。

エリス「おかわり！」

森「もう五つ目だろう？体に良くないよ、エリスちゃん」

ケーキを強請る幼女にデレデレとしだす森。
次のエリスの一言で態度を変えざるを得なくなった。

エリス「コウヨウから秘密聞いてあげてもいい」

森「確か冷蔵庫にチーズケーキがあったね」

冷蔵庫からチーズケーキを取ってエリスの前に置く。
それを見てエリスはニコニコと紅葉に向かって言った。

エリス「教えて頂戴！何なの？秘密って」

紅葉「そういう関係、ということじゃ」

森「そういう……？……真逆っ！」

紅葉「なんじゃ、知らんのかえ？」

森「中也くんが？誰と？」

紅葉「決まっておるじゃろう。Aじゃ」

驚く前に脳裏に浮かんだのは、Aを自分の補佐にしたいと切に訴えた中原の姿だった。

森「……なるほど。だから傍に置きたがったのか」

紅葉「だから危ない目にも合わせたくないのであろう。それに中也が言うに自分の女が他の男と夜を過ごすのが耐えられんそうじゃ」

森「そうだろうね。そういう事なら話は別だ」

そう言って電話をかけ誰かを呼ぶ。
暫くして紅葉の携帯が鳴った。

紅葉「中也が今から来るそうじゃ。Aと」

森「わかった。二人で来なくてもいいのにね」

紅葉「大方、一緒に謝りにでも来るつもりであろう」

部屋にノックの音が響く。
重厚な扉が開けられ、一人の女性が入ってきた。

「森さん、瑞希です」

森「突然呼び出して済まないね」

瑞希「いえ、何でしょう」

森「明日から中也君の補佐にAちゃんを付ける。だから仲良くしてくれ給え」

瑞希「…上西さんですか？どうして情報整理担当が？」

森「色々あってね」

瑞希は納得のいかない表情でわかりました、と部屋を出た。

五十六言目→←五十四言目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す