三十九言目 ページ43
菊池「芥川さんが、助言を……?上西さん、あなたは何者なんですか」
貴方「だから、ただの情報担当ですよ。はい、資料」
菊池「ありがとうございます……。日を改めて誘いに来ますね」
貴方「気が変わったら行ってあげてもいいよ」
仕事中、特に芥川と一緒の時はふとした瞬間に太宰の声が脳を過ぎっていく。
先刻みたいに口から出る事もある。
でもそれのおかげで芥川は自分の行くべき場所を見失わないでいられるんだと思う。
あの子は何かにつけて太宰さん太宰さんと言う割には太宰の言っていた事、していた事を忘れている時がある。
それを私は意地悪に見えるかもしれないけれど、思い出させてあげている。
あまり自慢にしたい話じゃないけど、我ながら太宰の真似は上手いと思ってる。
前に先刻みたいに芥川に言った時、偶々首領が見ていたみたいで、後々雰囲気や目つきが太宰本人そのもので驚いたと言われた。
別に嬉しくはない。やろうと思って上手くなったと言うよりは、近くで見続けた事で身体に染み付いたものだから。
それにしても困ったものだ。
菊池さんのお誘いはかなりしつこい。
一度二人きりになれば彼の思うつぼだろう。
しかも異能が厄介だ。私もかかってしまえば心身共に菊池さんを気にかけてしまうのだろう。
考えただけで吐き気がする。
私は中也がいい。中也以外の男なんて興味ない。
普段は仕事だからしょうがなくだけど、それ以外の個人的な用で会いたくはない。
樋口ちゃんや姐さんや芥川、銀ちゃん、広津さん、首領、エリスちゃんなんかは別。
相手の事をちゃんとわかってるから。
でも菊池さんはこの前会ったばかりだ。それに実力もわからない。
一人画面に向かってそう考えているとまた扉の開く音がした。今日は来客が多い。
近づいてきた足音は後ろで止まったが、それと同時に耳元で息を吐く様に名前を呼ばれた。
突然の事に肩を揺らすと楽しそうな笑い声がした。
貴方「ちょっと!今仕事中!」
そう言うと中也はニッと笑った。
そんなとこもかっこいいから許しそうになる。
中也「悪かったって。この前借りてたヤツ返しに来た」
貴方「あぁ、忘れてた」
渡された紙の束を受け取って棚に戻すと彼はソファーに座って手招きをした。
貴方「何?」
中也「接吻、してェ」
貴方「だから!今仕事中でしょ?家と仕事は分けてよ」
中也「それはわかってる。けどよ、一回だけなら良いだろ?」
一回だけ、その言葉に惑わされちゃいけないと思っても迷ってしまう。
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時