四十言目 ページ44
貴方「うぅ、一回…」
中也「ンな迷う事かよ」
ソファーに座った私の足を跨ぐ様に膝立ちをして、彼は上から見下ろしてきた。
私の肩をかするようにソファーの背に手をついた彼。
昨日とまた違うその表情に見惚れそうで視線を外した。
それを見た彼にまた目線は固定され、中也の青い真剣な目がじっと私を離さない。あれだ、世間一般では顎クイとか呼ばれるやつ。恥ずかしい。
中也「なァ、一回だけだ。後は帰るまで我慢する」
貴方「じゃあ、舌入れるの無しね」
中也「……おう」
残念そうに、諦めたように小さくそう言って彼は私に触れるだけの長い接吻を落とした。
昨日のでよくわかった。彼は接吻が凄く上手い。
他の事に関してはもっと上手な人に出会ってきたけど、接吻はダントツで上手い。ちょっと舌を入れられただけで頭が真っ白になるくらい。
あぁ、わかった。中也ってきっととんでもない接吻魔だ。じゃなきゃこんなに上手い理由がわからない。
ものの言い様や身振りは偶に雑でも舌先だけはあまりにも器用。
彼の知らなかった事を毎日少しずつ知れている事は嬉しい。
離すと彼は物足りなそうな目をして隣に座った。
貴方「足りないんでしょ」
中也「足りる訳ねェだろ。……どうせ来るならしてる間に来りゃァいいのによ」
貴方「何が？」
中也「菊池の話だ」
貴方「見てたの？」
中也「先刻通路で会った。手前に会った後は誰が見てもわかるくらい浮かれてやがる」
貴方「私興味ないって遠回しに言ったんだけどなぁ」
中也「はっきり言ってやんねェと勘違いしてるかもしんねェぞ」
貴方「それで、妬いて態々来たの？」
中也「だったら悪いかよ」
貴方「悪くはないよ。ただ、もう少し内緒にさせてね。この仕事なくなるなら別にいいんだけど、ある内は困るから」
中也「わかってる。首領のとこ行ってくる」
貴方「行ってらっしゃい」
ドアノブに手をかけてふとまた此方に振り返った。
中也「帰り何時も通りか？」
貴方「うん、今の所は」
中也「迎えに来るから待ってろ」
貴方「え？いや、別に大丈夫だよ」
中也「いいだろ。どうせ帰る所も同じなンだしよ。出来るだけ彼奴には会わせたくねェし」
貴方「……菊池さん？」
中也「あァ。確実に狙ってやがる。あんまり二人きりになるンじゃねェぞ」
はいはいと流してあまりにも心配する彼に短く接吻をすると声をあげた。
貴方「サービス。ほら、行ってきなよ」
彼は小さく返事をして、嬉しそうな足取りで出て行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 636人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (
レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました（笑） (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます！頑張って書こうと思います！ (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます！ (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます！いつもゆっくり更新ですが頑張りますね！ (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅野 | 作成日時：2018年4月15日 0時
