四十七曲目 ページ48
夜のそよ風に浴衣の裾が舞う。
私たちのほかに何人か涼やかな浴衣に身を包んだ人たちが目に入り、悪目立ちをすることはなさそうだ。
その隣には誰もが異性を連れていて、なんとなくノスタルジック。
思わずロキを思い出してしまったけど、今私の隣にいるのはルーシィだ。
「すごい盛り上がりようね!」
「ルーシィにとってはこれが初めてだったわね。愉快な人が多いおかげで毎年毎年いい騒ぎよ」
一陣の風が吹き、思わずルーシィがまとめてくれた髪の毛を抑える。
一度、ロキと二人きりで来たことがある。いわゆるデートというもので、だけど後にも先にもそれ一度だけだった。
すごく、幸せだった。
「……女って不便ね。いちいち過去のこと振り返るんだから」
「何の話?」
自分の女々しさにうんざりしてると、ふと声をかけられた。
珍しい。
マスターとラクサスが、肩を並べて歩いているではないか。
破門されて以来、二人がこんなに仲良さそうな姿を見るのは初めてだ。お互い、意地を張るのはやめたのだろうか。
「祭りを楽しんでおるか?」
「うん、それはもう!」
心底楽しそうに笑いながらルーシィは答える。
それに同調するように、私は微笑みを返した。
私達の返答に、マスターは嬉しそうに笑う。
彼自身が提案した祭りなのだから、その上彼の大好きなギルドの仲間の笑みを見てそれはそれは嬉しいのだろう。
ラクサスも心なしか頬が緩んでいる。
小さく歪められた口元は、きっとあれでも笑っているのだろう。
「いいぞいいぞもっと楽しめ! 祭りは楽しまねば損じゃ!」
愉快に豪快に笑うマスター。
楽しそうな彼の笑みは、どことなく優しくて私の両親を思い出させてくれた。
「……A」
「ん? なぁに、ラクサス?」
「いや……楽しそうだな」
唐突にそう問われ、少しだけ不思議だったけれど私は笑顔を消すことなく返す。
「えぇ、楽しんでるわ」
「……そうか」
「そう言う、ラクサスは?」
「……あぁ、」
「おールーシィ! こっちにこいよー!」
ラクサスの言葉をかき消すように響くナツの言葉に、呆れや笑い、それぞれの反応を見せる。
ちなみに私は後者だ。
「ったくもー、ナツうるさーい! ……じゃ、Aも行こ?」
「嫌よ。呼ばれてるのはルーシィなんだから、一人で行ってきなさいな」
口元に手を当てからかうように言ってやると、ルーシィは可愛いことにみるみる真っ赤になっていった。
全く脈がないわけではないのね。こういう情報も、重要よね。
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年7月1日 1時