四曲目 ページ5
「付き合ってたの！？」
「あれでか！？」
「今はどうなってるの！？」
「あいつ彼女五万人くらいいただろ！？」
ルーシィとナツが交互に私を質問責めしてくる。
それの応対に困っていると、白髪の美女がこちらに向かって歩み寄ってきた。
「盛り上がってるところ悪いけれど、ナツたち。 任務を受けてくれない？」
「え、任務？どんなの？」
「俺ら帰ってきたばっかだぞ」
「なんの他愛もない、ただのシーボンズ退治よ」
そういえば、もうそろそろそんな時期だったか。
夏に差し掛かるころ、つまるところ海開きの少しだけ前、彼らは大量に出現して人々を困らせにくる。完全な愉快犯で、しかも結構好戦的な性格をしているから彼らが退治されるまで海開きが先延ばしにされたことが今までに何回もあった。
「シーボンズってなんだっけ？」
「なんだ、知らないのか。 海の妖怪のようなものだ、真っ黒なタコのような体をしている。 全長は数十メートルにも及び、団体行動を好み人に危害を加えるのが趣味な気味の悪い奴らだ」
「……気持ち悪ーい……」
「どれ、報酬は……六万ジュエル……そこそこといったところだな」
「行こうぜ！どうせ暇だし！」
どうやら行く方向で傾いているらしい。
私には関係ないことなので、彼らに声をかけることもなくそっとその場を離れてカウンターのほうへ向かう。マスターは今日は不在のようで、いつも彼が腰かけているカウンターテーブルにはティッシュディスペンサーがその存在を主張していた。
ビールの入った容器が目の前を飛んでいき数歩足が止まって、そしてまた歩き出す。私もそろそろ意を決して任務の一つ二つでも受けないと生活費が苦しくなりそうだ。
そう、思った直後
「Aも一緒に行こうぜ！」
そんなナツの声がかかって、私の足がぴたりと止まった。彼の言った言葉が頭の中でプロセスされる前に、勝手に体が振り向いてしまう。
ミラを含む五人全員の視線が私に向いていた。……ハッピーも含めると六人だ。
「……え」
「なんか用事あんのか？任務とか？」
「……ない、けど、」
「そっか、ンじゃあ行こうぜ！」
そんなご飯を誘うようなノリで任務に誘われて、私は薄く開いた口がふさがらない。
その間にルーシィが、エルザが、そしてグレイがナツの発言に同調していく。最後にミラが私のほうを見てふわりと微笑んでから、「そうねそれがいいと思うわ」だなんて言ってしまった。
昔から「ノー」の一言をいうのが苦手な私。どうやら決まりらしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：始まりの神 | 作者ホームページ：
作成日時：2016年7月1日 1時
