三十七曲目 ページ38
「……あいつらしい別れだな」
「……私、頑張れたのかしら」
両腕を組んで、頭を腕に休める。
胸がずくずくと痛んでとても辛い。まるで心臓をわしづかみにされているような、そんな苦しさ。
ロキを失って最初の一ヵ月は、ずっとこんな苦しさに苛まれていた。
「……私、一時期ね……ものすごくルーシィを恨んだのよ」
「ルーシィって、あの新入りの子だよな?」
「そう。……私が誰よりもロキを理解して、誰よりもロキを救いたかったのに」
すっと手を伸ばす。
その伸ばした手は、いつまで経っても空っぽのままだった。何かを掴むように握りしめてみても、何も掴むことはできなかった。
……いつだって、空っぽだった。
「ルーシィは……出会って間もない、ロキのことをまるで理解していなかったのに……」
手のひらを開閉させる。
「ロキを、救えた」
ゆっくりと手をおろした。
口から紡がれた自分の言葉が、意志を持ったように私の胸を突き刺す。
自分が無力だと何度思い知らされただろうか。
それでもあきらめることはなかったのに。
「私……ルーシィがロキを救ったあの日、あの場所に共にいたのよ」
ロキのことを理解していた私が、ロキが最期の場所にどこを選ぶのかを想像するのは他愛もないことだった。
あの女の墓の位置も知っていた。
何度も、あの女の墓を蹴り倒してしまおうとさえ思った。
ロキを苦しめたのはあの女。
そしてあの女は……死んだ今も、ロキを苦しめ続けている。
許さない。絶対に許さない。
……だけどきっとロキは、そんなことを望んでいない。
「傍に行って抱きしめてあげたかった。でもロキを救えなかった私に、そんな資格はなかったの」
「……」
「そうよ……私は諦めたの」
諦めた。逃げた。
あの最期の瞬間、もうロキを救うことはできないという事実を受け入れて、背を向けた。
絶対に逃げないと、諦めないと豪語しておいて、私は。
だから私には、ロキのことを嘆く資格など少しもないのだ。
「……でもルーシィは違った。ルーシィは力を振り絞って、ロキを抱きしめた」
そして星霊王を呼び出し、全てを解決して見せた。
妬ましかった、羨ましかった……それ以前に、自分が醜く見えた。
愛した人一人さえも救えなかった私が、誰かを愛す資格なんて最初からなかったのだと。
そう、思い知らされた。
「……そうか」
ギルダーツはそういったきり、何も言わなくなった。
私も何も言えず、ただ膝の間に顔を埋めた。
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年7月1日 1時