二十二曲目 ページ23
まず真っ先にエルザが舞う。
私の攻撃はどちらかというと主戦力ではなく、援護系だ。だから、まずは皆に前線に出てもらわなければならない。
「俺にも、戦わせろー!」
「うー……ナツ、オイラ、まだ眠いよぉ……」
戦闘馬鹿としか言えないようなセリフとともに、ナツは砂埃をあげながら海へ駆けて行った。
あとについてくるのは、眠さでふらふらと不安定に飛んでいるハッピーだ。
エルザの剣は真っ先に一匹目のシーボンズを仕留めたかに見えたが、ギリギリのところでシーボンズの触手がそれを遮る。
大きさが半端なく、一本の触手の太さは人間二人分はありそうだ。その触手が一匹に八本、しかも何匹もいる状態。
この最強チームと謳われるチームなら大丈夫だと自信満々な反面、こんなのどうやって倒せばいいんだと不安げに心が揺れた。
「いやー! 何あれ気持ち悪い!」
すぐに聞こえたルーシィの悲鳴。
慌てて寝間着から着替えたのか、少しだけ乱れた服装と結ばれていない髪。
その言葉に私はシーボンズを振り返る。
確かに、これはどう考えても気持ち悪いだろう。
まるでどでかいボールに大量の髪が生え、その隙間から目玉が覗いている。
こんな妖怪、ホラーの中でしか存在しなかったらよかったのに。
「あれ、Aは戦わないの?」
「全員が前線に出るの待ってるの」
「え、どうして?」
髪を結びながらルーシィは首を傾げ尋ねる。
武器をもたず、浜辺の上でただ待機している私ははたから見ても、戦う準備ができていないと思われているだろう。
「私は援護攻撃が得意なの」
「そうなんだ……」
「ほら、ルーシィも早く」
「う、うん!」
私に後押しされるように、ルーシィは足元の鍵束から一本の金色の鍵を取り出した。
そして、まるで十字を描くように扉を開く。
「開け! 金牛宮の扉、タウロス!」
その鍵は光を伴い、やがて巨体の牛のような男が現れる。
正直この決め台詞、目の前で実際に本物を見てみたかったんだ。
今私、すっごく感動している。
「ンモー! ルーシィさん、こちらの方はどなたですか?」
「私の友人のAよ」
「少し胸が欠けていますがナイスバディ!」
「思い切り蹴ってあげてもいいのよ」
すぅ、と片足を上げて構えを取ると慌ててタウロスは後方へと下がった。
大体、欠けているって何よ。
「と、とにかく、タウロス! あの気持ち悪いのやっちゃって!」
「ンモー!」
とにかくこれで、役者は揃った。
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年7月1日 1時