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二十曲目 ページ21

「入りたい……本当はすごく、入りたいわ」
「じゃあなんで迷う?」

グレイの問いかけに沈黙する。
膝の前で合わせた両手を、きつく握りしめた。

ずっと不思議な感情の渦が、心の中で蠢いている。
私は今何故こんなに悩んでいるのかすら、よくわからない。
だけど、そう簡単に解決できる問題ではないことは、百も承知していた。

「このままじゃ……私、ロキを忘れてしまいそうで……」
「……!」

ずっと一緒のチーム。
ギルドに入ってからずっと一緒。
片時も離れたことのない、仲の良いチームだった。

一緒に任務をこなして、一緒にギルドで時を過ごして……
たとえ女を引き連れていたとしても、たとえロキが女のもとへ行ったとしても……
チームという繋がりが、そこにあった。
私達はそれでも、一緒だった。

そして今、私はまだそれを引きずっているんだ。
ロキは……もう、星霊として先へ進んでいるというのに。
私はまだ、此処にいる。ずるずるずるずる、ロキとのことを引きずっている。

簡単に解決できる問題ではなかった。

ずっと忘れかけていた問題だったけど、エルザの言葉で思い出してしまった。
一人ではチームは作れない。ロキが抜けた時点で、私は一人だった。
――……ロキがいなくなった時点で、チームは解散されていた。

頼れる星霊魔導士のもとで、ロキは先を歩んでいるのに
同じチームである私は何故まだこんなところで愚図愚図しているの?
依頼もろくに受けず、人とも関わりを持たぬようにして、
帰ってくることもない男の帰りを待ち続けている。

こんな、無様な私が……

「みんなが、こんな私を欲しがるはずがないッ……」

膝の間に顔を埋める。
頬を伝う涙が、膝を伝いおちていくくすぐったさを感じた。

こんな私を何故必要とするの。
こんな、こんな……未練がましくて、醜くて、愚かな私を――……

「欲しいから言ってんだろ」
「……」
「俺らは今日、お前と一緒にいられて楽しかったぜ」

お前は違うのか?
そう尋ねられて、指先がピクリと震えた。

楽しかった。
ものすごく。
今までにないほどに。

「ッ……楽しかった……!」
「そんな深く考える必要はねぇよ。 俺らのチームに入ったところで何も変わらない。お前はお前のままだ。ロキも……ちゃんと、俺らの仲間のままだ」

顔をあげた私の涙を、グレイは指で拭う。
驚いたままの私に、グレイは微笑みかけた。

「だって俺ら、妖精の尻尾の仲間だろ?」

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設定タグ:フェアリーテイル , FAIRYTAIL , 妖精の尻尾   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:   
作成日時:2016年7月1日 1時

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