十一曲目 ページ12
「肉食うぞ肉ー!」
「おいらはお魚食べるー!」
香ばしい肉の焼ける音。
垂れる肉汁とそれに合わせて食欲をそそる匂いがあたりに広まった。
本当はエルザが料理をしそうになっていたが、なんか不安だったので全力で止めた。
換装すればおそらく料理はできたのだろうが、いろんなものが犠牲になりそうだった。
というわけで、私とルーシィが肉を手際よく切り分け、男陣はそれを串刺しにし、エルザには火を点けてもらうよう頼んでおいた。
ハッピーは薪集めだ。
結局こんな感じになったが、初心者の集まりでのバーベキューとしては、かなり完成度が高いのではないだろうか。
「んーまそー!」
「ちゃんと野菜食べなさいね、ナツ」
「いや!俺は肉だけ食うんだ!」
「ざっけんな、俺らの取り分がなくなんだろうが!」
私の台詞に予想通りの返答を返したナツに、私はくすりと笑みを浮かべる。
こうなることを見越して、材料調達(狩り)に行っていたエルザとナツには肉を多めにとってもらうように頼んだのだが。
野菜類はグレイとルーシィが町まで調達しに行った。
浜辺と町にはそこまで距離はなく、歩いて数分の距離だったらしい。森には案の定何もなかったそうだ……。
「まだ焼きあがらねぇのかー?」
「もー、ナツもうちょっと待てないの?」
「ナツせっかち!」
「んぐ、ハッピーまで……」
二人に言われ、しぶしぶ押し黙るナツ。
だがその目はまだキラキラと肉に向けて輝かせていた。
「そろそろ……かしら?」
首を傾げルーシィに尋ねると、ルーシィが一本の串をつまむ。
そして何回か回し、肉色を確かめる。
「うん、そろそろ食べていいわよ」
「マジで!やったー!」
「ナツはあと!」
「なんでだよ!」
騒がしいな、と思いながら二人を見やる。
肉に手を伸ばそうとしているナツに、その手を叩き落とすルーシィ。
まるでお母さんと子供みたいだ。
……確かにナツなら一瞬で焼いてる肉全部食べてしまいそうだけど。
しょうがないから、私は一本串をつまみ、ナツに渡す。
「はい、ナツ」
「おっ、くれんのか!?」
「一本ずつね」
「へへっ、サンキュー!」
ご機嫌な面持ちでナツは肉にかじりついた。
「もー、A、あんまりナツを甘やかさないほうがいいわよ?」
「ふふ、まぁ肉もいっぱいあることだし、今日くらいはいいじゃない」
笑っているルーシィに少しだけ自然に返せた。これだけでも私にとっては大きな進歩。
こうやって騒がしいのは嫌いじゃない。ううん、大好きだ。
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年7月1日 1時