104◆親友◆ ページ10
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あの日、あの時の選択を、私はずっと後悔している。
館内を探し回ること数十分。廊下を気だるげに歩くその姿を漸く見つけ、桃井はAを呼び止めた。
鬱陶しそうに目を細めこちらを見据える彼女は、返事の代わりにひとつ舌打ちする。言外に「何か用か」と目が訴えていた。
「あなたは本当にAじゃないの」
「…またそれかよ」
縋り付くような目で見る桃井に、Aはうんざりした様子で吐き捨てるように言う。
何故こうも彼等は自分と真白Aを同一人物にしたがるのだろうか。もはやイライラを通り超えて呆れてくる、と溜息を吐きながら立ち去ろうとする彼女に、桃井は「待って!」と声をあげた。
「火神A。誠凛高校夜間学級1年、誕生日は8月2日、血液型はB型、身長156センチで体重は42.6キロ。家族は父・母、双子の兄の4人家族。小学3年生の頃に家族でアメリカに移住し、中学3年の時に兄が、そして先月自身も日本へ帰国。昼間に飲食店のキッチンでアルバイトしながら夜は定時制の高校に通っている」
「…プライバシーもクソもねェな。アンタもしかしてアタシのストーカー?」
「この程度の情報なら、あなたを知る人達に聞いて回ればすぐに集まる。身長や体重は目視から見積もって計算したけどね…合ってた?」
「ああ、気持ち悪いくらいにね。ドンピシャ」
教えたのは恐らく大我や氷室だろう。名前や学年はともかく、学校名やアルバイト先まで洩らすとは何事か。個人情報保護法などあったものじゃない。
後でシメるか、と心の中で決意してから、Aは桃井に向き直る。
「コソコソ嗅ぎまわってくれた所悪いけど、アタシは真白Aじゃねェしそんなヤツも知らない。そう最初から言ってんのに、何なのアンタ達。アタシの言葉通じてる?アメリカ暮らしが長いとは言え今は日本語喋ってるつもりなんだけどさァ」
「知らないフリをしてるんじゃないの…?」
「…何だって?」
ピクリ、とAが反応する。
「私達のこと、知らないなんて嘘吐いて…こんな演技してるだけで、本当は私達の知ってるAなんでしょう…!?」
桃井が悲痛な声で言った瞬間、周囲の温度が下がった。
こちらを見る――否、睨み付けるAの瞳は心底冷え切っており、桃井は思わずひゅっ、と息を呑む。
――まずい。そう思った瞬間、桃井は背中に鈍い衝撃を受け、首を掴み上げられた。
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あかりんご(プロフ) - ずっっっと待ってます、また更新してくれるのを楽しみに待ってます! (2021年4月11日 16時) (レス) id: 9550685691 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - 続き待ってます…。不安定な所での更新停止中なので何だかウズウズしてしまいます…。 (2020年2月9日 3時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - こ、ここで?ここで更新停止中なの?!めちゃくそ気になんじゃん…更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年11月21日 18時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - とてもおもしろくここまで読ませて頂きました!この後キセキと真白ちゃんがどうなっていくのか、とても気になります…!お話の続き、待ってます!! (2019年11月2日 13時) (レス) id: 4db15d5771 (このIDを非表示/違反報告)
honoka1013(プロフ) - この続きがとても気になります。更新を再開してくれませんか?楽しみにしています (2019年9月3日 15時) (レス) id: f57eb90381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁樹 | 作成日時:2016年12月24日 5時