125◆わからない◆ ページ32
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自分の分の食事をマネージャー達によそってもらい、席に着く。
一緒に食堂へ来たが、黒子は自分の学校のメンバーと食べるようだ。いつもなら仲間に入れろと無理矢理突撃するのだが、今日はなんだか距離を置きたかった。
少し離れた誰もない一角の席に座って、一人で食べ始める。
「…俺が正しいと思うこと、か」
何が正解で何が間違いなのか、もうわからなくなってしまった。
自分が信じていたものを引っくり返された気分だ。あまり、良くない気分である。
でも、不思議と心はすっきりしていた。自分の本音をぶつけたからだろうか?八つ当りでしかなかったのに、真正面から受け止めて諭してくれた黒子には感謝と同時に申し訳無さを感じる。事実、自分は酷いことを言ってしまった。
謝った自分を、黒子は許してくれたけれど。真白は許してくれるだろうか?とても酷い仕打ちをした自分達を。
…もし自分が同じ立場だったら、一生許せないかもしれない。
「うー無理ゲーっスよ…」
「何がだよ?」
「おぅっ!?」
唐突に背後から声がかかる。誰かと思って振り向けば、そこにいたのは元主将──笠松だった。
飛び跳ねた心臓を押さえていると、笠松は黄瀬の真正面の席に夕飯の乗ったおぼんを置いた。どうやら相席するらしい。
「珍しいな。お前が一人でいるなんて」
「俺にも一人になりたい時くらいあるんスよー」
「まあ、気持ちはわかるけどな。黒子と何かあったのか?」
鋭い。主将だからか、はたまたPGというポジションだからか、笠松はよく周囲を見ているなと思う。
「お前はわかりやすいんだよ」と言う笠松に、どうせ俺は態度に出やすいですよと悪態をついてみせる。こんなんじゃ、役者はまだまだ目指せそうにない。
「…先輩は、自分の信じてたものが実は嘘だらけだったって知ったら、どうする?」
「あ?」
「黒子っちは俺が正しいと思うことをしろって言ったけど。でも俺、馬鹿だから。もう何をすれば間違えないのか、わかんなくて」
出来ることなんて何もない。償いたいと思った相手は、もうどこにもいない。
正しいと思うことをしようとして、また間違えない保証がどこにある?
そう思い至って、自分の身動きが取れなくなってしまったことに気付いた。
「誰だってそうだろ」
「え?」
「俺も間違いだらけの選択をしてきた。後悔したことだって数えきれねえくらいある。そもそも、だ。生まれて此の方一度も間違えなかった人間なんかいやしねえんだ」
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あかりんご(プロフ) - ずっっっと待ってます、また更新してくれるのを楽しみに待ってます! (2021年4月11日 16時) (レス) id: 9550685691 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - 続き待ってます…。不安定な所での更新停止中なので何だかウズウズしてしまいます…。 (2020年2月9日 3時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - こ、ここで?ここで更新停止中なの?!めちゃくそ気になんじゃん…更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年11月21日 18時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - とてもおもしろくここまで読ませて頂きました!この後キセキと真白ちゃんがどうなっていくのか、とても気になります…!お話の続き、待ってます!! (2019年11月2日 13時) (レス) id: 4db15d5771 (このIDを非表示/違反報告)
honoka1013(プロフ) - この続きがとても気になります。更新を再開してくれませんか?楽しみにしています (2019年9月3日 15時) (レス) id: f57eb90381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁樹 | 作成日時:2016年12月24日 5時