117◆疑惑、疑念◆ ページ24
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「――え?Aのこと?」
「うん。知ってることがあったら教えてほしーんだけど」
休憩中だった氷室を捕まえた紫原は、そう言葉を発した。
氷室は、紫原が他人に興味を持つなど珍しいと驚くも、ただその興味が向いた先の人物についてはいただけないと頭を抱えた。
「あー、アツシ?俺の記憶が正しければ、確かお前はAのことを嫌ってるんじゃ…」
「まあ嫌いだけど〜……でも、嫌いだからで全部見ない振りすんのはもうやめなきゃって思うんだよね〜」
真白が白鷺に嫌がらせをしていると聞いた時、確かにショックではあったが、実はどこか他人事のように―――いや実際他人事ではあるが――思っていた。
そして失望した半面、真白がそんなことするはずがないと思ったのも本当だった。しかし、それだけだ。
自分が何かせずとも、赤司や他の誰かが何とかするだろう。
そう考え、問題から目を逸らして放置し続けた結果――真白は行方不明になり、亀裂の入った絆は、修復不可能な所まで来てしまった。
如何に自分が浅はかだったか、赤司と桃井の会話を盗み聞きして漸く思い知ったのだ。
「アツシ?」
「っ、取りあえずアイツと、それから火神のことも聞きたいんだけど!」
「あー、タイガのことなら構わないんだが……」
「室ちん?」
どうにも、氷室の返事の歯切れが悪い。心底申し訳なさそうに、困った表情を浮かべて言った。
「すまない、Aのことはあまり話せない」
「は?何それ。なんで?」
「タイガに口止めされてるんだ」
「!」
その理由を尋ねるが、「妹の印象をこれ以上悪くしない為」と答えたらしい。果たしてそれが本当の理由なのかはわからない。
氷室も口止めの事は疑問に思うも、確かに本人のいない所で個人情報を喋るのは良くないと思い、了承したとのことだった。
氷室は、力になれなくてすまない、と申し訳なさそうに言った。
何か答えてくれそうな事は――と考えて、そう言えばとひとつ思いだす。
「室ちんと火神って幼馴染なんだっけ?」
「そうだよ。小学校からの付き合いかな」
「ふーん…じゃあ火神の妹って昔からあんなヤツだったの?」
「いや、俺はその頃のAを知らないんだ」
「…え?」
「俺がAと初めて会ったのは中学3年の頃だったかな……それがどうかしたかい?」
「…いや、」
紫原は、自身の背に冷や汗が一筋伝うのを感じた。
もし、もしも、氷室の言っていることが事実ならば――
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あかりんご(プロフ) - ずっっっと待ってます、また更新してくれるのを楽しみに待ってます! (2021年4月11日 16時) (レス) id: 9550685691 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - 続き待ってます…。不安定な所での更新停止中なので何だかウズウズしてしまいます…。 (2020年2月9日 3時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - こ、ここで?ここで更新停止中なの?!めちゃくそ気になんじゃん…更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年11月21日 18時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - とてもおもしろくここまで読ませて頂きました!この後キセキと真白ちゃんがどうなっていくのか、とても気になります…!お話の続き、待ってます!! (2019年11月2日 13時) (レス) id: 4db15d5771 (このIDを非表示/違反報告)
honoka1013(プロフ) - この続きがとても気になります。更新を再開してくれませんか?楽しみにしています (2019年9月3日 15時) (レス) id: f57eb90381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁樹 | 作成日時:2016年12月24日 5時