95◆太陽と月、鏡合わせ◆ ページ1
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脳内がぐらぐらと揺れる。否、揺さぶられているようだ。
何に?目の前の――あの日消えた彼女に瓜二つの、別人の女に。
――ああクソ、こんな女に正論で返された。
苛立ちと不甲斐なさで吐きそうになる。この女を見ていると、どうしようもなく苛立ってしまって仕方ない。
何がそんなに苛立つのか。それは自分でもわからない。真白そっくりな容姿で毒を吐くから気に入らないのか、はたまた真白とそっくりな容姿なのに決してこちらに関心を向けないからなのか。
(――いや、きっとそのどちらでもないんだろう)
真白に嘲笑われている様に感じるからだ。何もわかっていない、何も見えていない、馬鹿だと、情けないと軽蔑され、憐れに思われているように見えて仕方がないのだ。
「つーかとっとと失せろチビ。早く寝ろっての。背ェ伸びなくなるんじゃない?」
「君の方が小さいと思うが?あと俺の身長は普通だ」
「大我より小せえヤツは全員チビなんだよ。女と背ェ比べして楽しい?自尊心すら小っせぇな、赤チビが」
「俺の名前は赤司征十郎だ。…ちゃんと、覚えておいてくれないか」
――向き合おうともせずに、一方的に切り捨てた俺のことを。
「ハァ?」
彼女の暗い瞳が、俺の眼を見据える。探るように覗き込まれたが、やがて彼女は舌打ちをひとつ鳴らすと俺からすっと距離を取った。
「アンタなんてどーでもいいんだよ。さっさと消えろ、いい加減ウゼェんだよ」
「そう言うと思ったよ」
俺は扉を開けて、食堂を後にする。扉を閉める前にもう一度彼女の顔を見てみたが、もうこちらを見ておらず、ただ意識だけを向けているようだった。
そこまでして拒絶するのかと少しショックを受けたがすぐに立ち直る。
火神Aは真白Aの真逆の存在だ。
何者も受け入れた真白と、何者も拒絶する火神妹。
俺達キセキの世代が和解し、あの事件の当事者が全員同じ場所に集ったこのタイミングで、真白にそっくりなあの女が現れた。
これは偶然か?
緑間ではないが、これは何かの天啓…運命だとすら思う。
これがもし運命か何かだとしたら、真実を知る最後のチャンスだ。
何故、あんなことをしたのか。
何故、何も言わなかったのか。
何故、突然消えたのか。
俺達はそれを知らなければならない。
何が正しくて何が間違っていたのかを。
それが自分達の罪になることだとしても、だ。
「まずは、火神大我に聞いてみるか…」
血の繋がった兄ならば何か知っているかもしれない。
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あかりんご(プロフ) - ずっっっと待ってます、また更新してくれるのを楽しみに待ってます! (2021年4月11日 16時) (レス) id: 9550685691 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - 続き待ってます…。不安定な所での更新停止中なので何だかウズウズしてしまいます…。 (2020年2月9日 3時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - こ、ここで?ここで更新停止中なの?!めちゃくそ気になんじゃん…更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年11月21日 18時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - とてもおもしろくここまで読ませて頂きました!この後キセキと真白ちゃんがどうなっていくのか、とても気になります…!お話の続き、待ってます!! (2019年11月2日 13時) (レス) id: 4db15d5771 (このIDを非表示/違反報告)
honoka1013(プロフ) - この続きがとても気になります。更新を再開してくれませんか?楽しみにしています (2019年9月3日 15時) (レス) id: f57eb90381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁樹 | 作成日時:2016年12月24日 5時