【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ37)

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35色目｢もしもワンチャン知り合いだったら全力でぶん殴りに行く｣。ページ37

｢前審神者の向かった場所までは……｣
｢流石に、調べることができませんでした。ゲートの記録を遡るにも、もう随分と日が経っていたので｣
｢まァ、そうだよな。……ん？これは……｣

目に付いた1枚の資料を見て、思わず手が止まる。そこに書いてあったのは、真名だけがない、審神者の個人情報だった。

｢こんなものまで調べたのか、白山｣
｢はい。あるじさまの、お役に立てればと思って｣

それを読んで、えっと声が出た。

｢あるじさま？｣
｢こいつ、私が一時期通ってた中学と同じ中学に通ってたのか｣
｢……え？｣

だが、と顔をしかめる。あの中学はそれなりに生徒数が多かったから、どこの誰かも分からん。しかしこれは有力な情報だ。もしかしたら私の知り合いかもしれん。……いや、誰かを知り合いなんて呼べるほど交友関係が広かったわけではないが。

｢通常、審神者同士が間違って真名を呼び合わないよう、出身校の管理までされているはずですが……｣
｢いや、この学校には私た……私は半年と少ししかいなかったんだよ。そもそもだ、元々私はこの本丸に来る予定がなかったんだ。調べてたところでなんの意味もないだろ、私はあくまで新人審神者なんだから｣
｢……それもそうですね｣

頷き、私の手元の資料に手を向ける白山。

｢現在、刀剣男士達の間でも、あるじさまを信用するか、しないか、論争が起きております。このままでは、内部分裂にもなりかねないかと｣
｢そうか……はァ、ぜーんぶ前審神者のせいだ、クソが死ね｣

はあっと溜息をつきながら上を向き、目を手で覆った。もし会ったらぶん殴るだけじゃ済ませらんないかも。表出ろや。そのツラ貸せや。目ん玉目がけて根性焼きでもしてやろうか？

再び白山に向き直り、声をかけた。

｢白山、ありがとう。調べるのは辛かっただろ｣
｢わたくしはあるじさまのためにと思ったまでです。それから……薬研藤四郎と、大和守安定が、あるじさまの様子を見てきて欲しいと言っていたので｣
｢薬研と大和守が？…ふむ、そうか｣

2人、特に大和守は最も間近に私の喘息発作を見た奴らだ。心配させてしまったかもしれない。そりゃァ薬取りに行っただけの主がいきなり入院だもんな。

｢2人には、症状はもう随分治まってそろそろ退院できると伝えておいてくれ。実際もう喘鳴は聞こえなくなってきてるしな｣
｢命令を受領しました。そのようにお伝えさせていただきます｣

資料を全てまとめて私に渡した後、では、と白山は帰って行った。