【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ33)

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31色目｢久しぶりに見るその顔に、私はすごく安堵した｣。ページ33

｢久しぶりだね〜xxxちゃん！急に入院になっちゃって大変でしょ｣

こちらもおっちゃん同様気心の知れた看護師さんに、点滴を用意されながら話しかけられた。相変わらず手際がいい。

｢もう大変も大変でいいとこだ。でも確かにいつもより発作が長く続くなとは思ってたんだよ｣
｢しばらく来なかったのにね。あ、これいつも通りステロイドね。はい、ちょっとチクッとするよ〜｣
｢はいよー｣

点滴が開始され、本格的な発作治療に入った。相変わらず喘鳴が聞こえるからか、看護師さんは心配そうに私を見る。

｢結構酷いね。社員寮に引っ越したって聞いたけど、あまりいい環境じゃないの？｣
｢うん、そう。だから必死になって掃除してたんだ。そしたら喘息出始めて……｣
｢そっかそっか、大変だったね。よく頑張りました！｣

看護師さんに頭を撫でられ、少しほっとする。この数日、本当にずっと苦しかったから。
袋からぽたぽたと落ちる液剤を眺めながら、私は看護師さんに問いかけた。

｢なァ、アニキ呼んでもいいか？寮には帰れないから家の方から入院道具持ってきてもらいたくて｣
｢うん、全然いいよ。てか持ってきてもらっちゃいな？その方がいいよ｣
｢いつも急でごめんな｣
｢いいのいいの、患者さんをいつでも診るのが私達の役目なんだから｣

じゃあ私は行くね〜と言いながら、看護師さんは入院部屋からは去っていった。……さて、アニキに電話するか。

点滴を打たれて動かしにくい左腕をなるべく刺激しないようにしながら、スマホを取り出す。LINEを開き、アニキとのトーク画面をタップしてそのまま音声通話に繋げた。
テロリンテロリン、なんてポップな呼出音が数秒なった後、すぐにアニキの声がする。

『どした？珍しいな』
｢いつものとこに緊急入院になったからいつもの道具持ってきて欲しいんだ｣
『入院？……あー、発作か。分かった。電車で10分かかんないからすぐに持ってくるよ』
｢うん、ありがとう｣

たったこれだけの会話で終わり、そのまま音声通話を切る。
……久しぶりの、1人だ。

***

看護師さんの｢お兄さん来たよ｣という声と共に、個室の扉が開いた。そこには入院道具を持ったアニキが立っている。アニキはそのまままっすぐ私のところに歩いてきて、道具を下ろしたあとで私の頭を撫でてくれた。

｢今回の発作、随分酷かったみたいだな。今は平気か？｣
｢ああ、今は落ち着いてる。急に呼び出しちまって悪いな｣
｢何言ってんだ、妹の面倒見るのも兄の役目だよ｣