【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ30)

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28色目｢とにもかくにも薬がないとどうにもならんぞ｣。ページ30

目が覚めた。時刻は午前11時手前。大和守も一緒に寝てしまっていたらしく、起こさないようにそっと布団に運ぶ。

とにかく今私がやることは1つだ。

廊下にそっと出て、柏手を打ちこんのすけを呼ぶ。

｢主さま！お体は大丈夫なのですか？｣
｢うん、今は。喘鳴も落ち着いてきたし、呼吸も随分と楽だ。それで……1つ、頼みたいことがある｣
｢はい、なんでしょう｣

こんのすけと目線を合わせるようにしゃがみ込み、私はハッキリと伝えた。

｢朱月さんと通信を繋いで欲しい。出来れば今｣
｢今、ですか……わかりました、通信を開始いたしますね｣

そう言うとこんのすけは目を瞑り、下を向いた。どうやら今、通信中らしい。
しばらくすると、こんのすけはパッと顔を上げ私に告げた。

｢主さま、繋がりました！｣
｢おお、本当か!? 良かった。……んﾞんﾞっ……朱月さん、聞こえていますか？｣

通信先にいるであろう朱月さんに呼びかける。その声が届いていると信じて。

『はい、担当朱月です。Aさん、何か問題でも起こりましたか？』

どうやら声は届いていたようだ。安心して会話を続けた。

｢そうですね……個人的な問題が｣
『個人的な……どういったことでしょう』
｢今日の午後、外出の許可をいただけませんか？｣

ここまで言うと、朱月さんはえ、と言って黙ってしまった。10秒ほどの沈黙の後、朱月さんは言う。

『……ちなみに……どのような要件で？』
｢呼吸器内科……かかりつけ医のところに薬を処方してもらいに行きたいんです。その……持病の喘息が悪化してしまって、吸入薬がもうなくて｣
『ああ、なるほど。政府管轄医院ではいけませんか？』
｢私の症状をよく分かっているのがかかりつけ医なので、できれば管轄医院は避けたいですね｣
『ふむ……』

また深く考え込むように、朱月さんは黙る。先程よりも長い沈黙の後、朱月さんの声が聞こえた。

『今日の午後となると急すぎて対応は厳しいかもしれませんが、外出手続き自体は可能です。Aさん、手続きはこちらで行っておきましょうか？』
｢……！ぜひ、お願いします！｣
『分かりました。では許可が降り次第また通達いたします。本日の通信要件はこれだけですか？』
｢はい、これだけです。ありがとうございます｣

ではお気をつけて、という声とともに、どうやら通信は切れたらしい。ほっとして、そのままぺたっと床に座り込んでしまう。

｢……まァ、今日の午後は難しいだろうな｣

上を見上げ、呟く。