【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ27)

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25色目｢多分思った以上に今の私は重症すぎるかも｣。ページ27

スマホのアラームがなるまでの間を、部屋の窓を開けたまま壁にもたれかかり、座ってぼーっとしていた。柔らかい風が入ってきて心地いい。恐らく換気にもなるだろうから多少喘息発作は治まってくれるだろう、ということを期待する。

……それにしても。
あの大和守が私を心配、か。ただ沖田総司と私を重ねていただけだろうが、それでも妙な感じがする。恐らく最も明確に私に対し殺意を向けてきた刀剣が、大和守だから。

ただ喘息で苦しんでいただけでこうも態度が変わったということは、余程大和守にとって｢咳｣の症状は重い印象があるらしい。……まァ、それもそうだよな。元主が肺結核で死んでしまっているんだから。
未だにヒューヒューと鳴り続けて息苦しい気管支にうんざりしながら、眠る大和守をぼんやりと見つめた。

──こんな時、いつもどうしてたっけ。……そうだ、いつもは兄さんが私の傍にいてくれたんだ。｢俺が代われたらよかったのに｣、なんていつも兄さんは言ってたな。でも代わらなくていい、兄さんは代わらなくていい。だって兄さんには、こんな苦しみ味わわせたくないから。

｢……兄さん……会いたい……｣

小さな声で呟き、うずくまる。だがこの体勢は気管支に良くなかったらしく、咳が出始めた。

｢ぅﾞ、げほっ、げほっごほっ、げほっ……ゔ……ゔゔ……げほっ……｣

こんなに長く続く発作は久しぶりで、苦しくて苦しくてたまらなかった。息が止まりそうで、実際咳に呼吸が邪魔されて息が吸えなくて。咳が止まっても気管支は狭まったままだから満足に空気を肺に入れてくれなくて。

｢……ん……あ、審神者！｣
｢げほっげほっ…やま、との、｣
｢喋らないでいいから、深呼吸できる？｣

大和守を起こしてしまったらしい。罪悪感に駆られながら言われた通り深呼吸をしようとするが、咳が邪魔をして満足に空気を吸えなかった。

｢えっと、えっと……あっ、ほらこれ！昨日の薬使ったら止まる？｣

大和守が差し出してくれたエナジアを手に取り、ゆっくりカプセルを吸入器に入れてボタンを押す。

吸入が終わってしばらく経ち、ようやく少しだけ落ち着いてきた。咳はない。相変わらず喘鳴は酷いが、呼吸が出来ないほどではなくなった。

｢……ありがとう｣
｢いいよ気にしなくて。……無理したら駄目だよ｣
｢無理はしてない、つもりなんだがな｣
｢でも喘鳴が酷い｣
｢発作が起きるといつもこんなもんだ、問題ない｣

問題大ありだよ、そう大和守は呟いてうなだれた。