【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ24)

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23色目｢大和守の心情など、私は当然知る由もない｣。ページ24

すぐさまカプセルを取り出し吸入器に入れ、ボタンを押した。そのまま吸入を行い、ふらふらとした足取りのまま口をゆすぎに行く。

当然すぐに効くわけでもないので、ばたりと床に倒れ込んで胸元を押さえた。気管支はまだ喘鳴をあげている。全く厄介な体だ、本当に。

ふいに体が持ち上げられ、別の場所に移動させられた。

｢……布団？｣
｢床で寝るよりマシでしょ。今日は僕が見ててあげるから、苦しくなったら言って｣
｢……、ありがとう、大和守｣

この前までの殺気はどこへやら、大和守は随分と私に手を焼いてくれている。……喘息が酷くて良かったと思ったのはさすがにこれが初めてだ。まさか喘息がきっかけで大和守の態度が和らぐなんて。

未だにヒューヒューとなる喉奥を抑えたまま、時折咳に苦しみながらも、気づけば私は眠りについていた。

***

まさか、審神者が喘息持ちだとは思わなかった。それもここまで重症だなんて。
審神者はきっとこれが普通なんだと思っているんだろうけど、流石に違うことくらい僕にだってわかる。これは確実に療養が必要だ。

｢あんな状態で、本丸の掃除をしただなんて……｣

本丸の外も中も、もう随分誰も掃除していないことにも僕は気づいていた。清光がずっと落ち込んでいたから、僕も掃除までは手が回っていなかったし。それをこいつは、この審神者はこの短い期間で掃除と修繕にまで着手した。
僕だけじゃなく、他の誰が審神者の命を狙ってるかも分からないのに。……いや、もう僕は、命は狙わないけど。

だって、喘息発作(あんなもの)見たら命を取る気にもなれないよ。沖田くんだって、肺結核で最期を迎えた。この審神者が、もしも喘息で同じになったら……それは避けたいと思った。

それに僕は、僕が何に怒っているのかも分からなくなっている。こいつが清光を拒絶したから？でも今こいつと清光は、普通に話してる。
あるいは、前審神者(あの男)への怒りを、この審神者に代わりにぶつけていたのかもしれない。この審神者はあいつじゃないのに。

どちらにせよ僕にはもう何も、審神者を敵対視する理由なんて残っていなかった。大人気なく意地を張っていただけなんだ。……そう思うと、羞恥心さえ湧いてくる。

この審神者は、この短い期間で何振りも何振りも手入れして。壊れた場所の修繕もして、掃除もして……。

｢…今さら僕がお前を主って呼んでも、許されるかなぁ……｣