22色目 ｢さすがに私がこんなんじゃ心配もされるよな｣。 ページ23
ヒュー、ヒューと鳴る気管支。咳にもそろそろ耐えられなくなり、ただ涙目になりながら胸元を押さえてうずくまるだけの私の背中を大和守はひたすらさすっていた。
大和守は、何も言わなかった。
残薬のない吸入器を取り出し、ああ、もうないんだったと思い出してカタンと横に置く。
｢それは？｣
｢喘息、の、薬……もうない、けど……｣
｢……薬、効いてないじゃん｣
｢埃、吸い込みまくったから……げほっ、げほっ！｣
大和守が、心做しかいつもより慌てているようにも見える。どうにも不安げな顔だ。
｢……ねえ｣
｢……？｣
大和守が、私の顔を覗き込みながら言う。
｢……沖田くんと同じようになったりしないよね？｣
｢おきた……ああ、そうか…………｣
大和守の持ち主だった沖田総司は、肺結核を患ってたんだった。そうか、だから今同じように咳をしている私に、沖田総司を重ねているのか。
｢私の、病気は……けほっ……肺結核じゃない、喘息なんだ、ただの……。ただ最近は、げほっごほっ！……本丸の修繕と掃除で、埃とか塵とか、吸い込みまくってたから……｣
｢……清光から、お前が無理してる様子だってのは聞いてたけど……咳を甘く見るなよ、駄目だよ……｣
私と同じ目線になるようにしゃがみ込み、ひたすらに私の背中をさする大和守。沖田総司と重ねているからこそだろう、その手つきは優しかった。
……やっぱり部屋に戻ってエナジア使おう。こんなところでひたすら咳をしているだけでは時間の無駄だ。……でも、動けそうにない。息が苦しすぎる。
恐らく私の喘鳴は大和守にも聞こえているのだろう。どうすればいいのか分からないというように、周りをキョロキョロとしている。
｢……やまとの、かみ｣
｢何？｣
｢私を、部屋まで連れてって……｣
｢……分かった｣
返事をするなり、すぐさま大和守は私を抱き上げて審神者部屋へと向かう。私の体を刺激しないようにしているのか、小走りでもあまり揺れなかった。体幹がいいんだな。
｢……ついたよ。布団敷く？｣
｢いや、薬が、あるから……別の……｣
｢一緒に探す。どんなやつ？｣
｢手のひらくらい、小さくて……白と緑の……薬も一緒にある、はず……げほっ……｣
私の説明を聞くと、大和守はすぐさまダンボールを漁り始めた。ここじゃない、ここにもないなんて言いながら、私と一緒に薬を探す。
｢……！審神者、これ!?｣
｢ん……そう、それ……！貸して……｣
23色目 ｢大和守の心情など、私は当然知る由もない｣。→←21色目 ｢ちょっと待て、こいつに会うことは想定してなかった｣。
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作者名：蜂蜜パスタ | 作成日時：2024年1月11日 20時
