【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ22)

今日:10 hit、昨日:17 hit、合計:7,525 hit

21色目｢ちょっと待て、こいつに会うことは想定してなかった｣。ページ22

しばらくして喘鳴が治まったことを確認すると、私は薬研の所に戻った。さすがにずっと交代してもらったままだと気分が良くないからな。マスクをしたまま廊下を歩いてると、テキパキと周りを片付ける薬研の姿が見えてきた。

｢薬研、もういいぞ。喘鳴も落ち着いた｣
｢本当か？……うん、喘鳴は聞こえないな。そういえば、喘息の薬は大丈夫なのか？｣
｢そろそろなくなりそうだから、取りに行かないといけない。ここ数日で何回も吸入してるからな｣
｢じゃあ手続きが必要だな。あとでこんのすけに頼むか｣

箒を受け取り、何度かやり取りを交わしたあとで薬研が私に告げる。

｢発作が出たらすぐに休むんだぞ、大将｣
｢ああ、分かってる｣

マスクをしていても息苦しいが、埃や塵を吸い込むよりはずっとマシだ。本当はマスクもしたくないんだが、咳の原因になるものはなるべく排除したい。

なるべく埃を舞わせないように、ゆっくりと掃いていく。それでも多少は舞い上がってしまうからか、やはり息苦しさは募っていった。

金属片は入れ物へ。そしてあとで｢墓｣へ持っていく。血糊は丁寧に拭き取り……それでも痕は取れないが。

一体どこまでがいつから放置されていたのかも分からない。刀剣達は、各々の部屋にずっと引きこもっていたのだろう。本丸中に、前審神者の｢仕打ち｣の痕が残っているから。……こんなのはあんまりだ。やはり前審神者は1度ぶっ飛ばさなければ。

舞っているのは埃なのに、それは日光に反射されてキラキラと輝いていた。

***

夜。私は｢墓｣のある縁側に座って、ボーッとしていた。というより外の空気が吸いたかった。

｢げほっげほっ、ごほっ、ぅﾞ、げほっ、げほっ｣

喘鳴が、ヒューヒューと鳴り止まない。吸入薬は先程で切らしてしまった。まさかこんなにも早いペースで使い切るとは思わなかった。とはいえ今こんのすけを呼ぶ気にもなれず、私はしばらくいつもの吸入薬はなしで生活しなければいけなくなる。

座ったまま胸元を押さえてかがみ、げほげほと咳をしていると誰かが歩いてくる足音がした。咳をしながらその方向を見ると、そこにいたのは……。

｢……なんでお前が……｣
｢やま、との、かみ……｣

かひゅ、と喉奥が鳴り、また咳が出る。今は大和守を気にしている暇などなかった。

｢ちょっ……お前、なんでそんなに咳して……まさか……｣
｢た、ただの、喘息……げほっ……｣

いつもの威勢はどこへやら、大和守はすっかり狼狽えていた。