20色目 ｢そろそろ喘息症状が酷くなってきたかもしれない｣。 ページ21
長押の掃除、床の掃除、集まった金属片は全て容器に入れ、血糊が付いているところは丁寧に拭く。埃が舞うからかなり息が苦しい。
｢たーいしょう｣
｢わっ、薬研｣
｢喘鳴が酷いな。ちと休憩するか？｣
｢いや……国広兄弟を手入れした関係で、この廊下の掃除は遅れてるんだ｣
そういいながらさっさと箒を動かすと、驚いたとでも言うように薬研が呟いた。
｢あの2人が手入れを受けてくれたのか？｣
｢ん？ああ。山姥切に頼まれてな｣
｢あの山姥切が、ねえ｣
やはり薬研でも驚くんだろう。あの日の山姥切の私への態度を、嫌悪感を知っているわけだからな。
｢んﾞっ、げほっげほっ！｣
｢ほら、無理をするな｣
薬研が優しく私の背中をさする。そのまま私の顔も覗き込んできた。
｢大将、やっぱり顔色が良くないぞ。ここは休んだ方がいいだろう｣
｢そんなに悪いか？｣
｢ああ、とても｣
｢そうか……｣
ふーっと息をついて壁にもたれかかった。しゃがむことはしない、下は埃が集まっているからな。
それにしても、そこまで重症だったとは。自分ではいつも基準ではまだマシくらいの発作なんだがな。やはり連日埃や細かい木くずを浴びていたからだろうか。気管支がやられているんだろう。
｢胸元に耳を当てるまでもなく喘鳴が周りに聞こえるくらいなんだから相当だろう、大将。この廊下は俺がやっておくから大将はしばらく休んでな｣
｢ん……分かった、少し外に行ってくる｣
お言葉に甘えて、埃のない外に行って休憩することにした。……そこまで酷く周りに喘鳴が聞こえてたとは思いもしなかった。
橋の上でぼんやりしていると、熊手を手にして乱が歩いてきた。
｢あるじさん？掃除は終わったの？｣
｢いや、ちょっと体調を崩してな。発作が起こって、今は薬研に代わりにしてもらってるんだ｣
｢発作？あるじさん、もしかして病気持ってるの？｣
｢ああ、ただの喘息だよ｣
ニコリと笑って言うも、綺麗な水色の瞳はなおも心配そうに私を覗き込んでくる。
｢無理したらだめだよ。あるじさんがいくら人間離れして強くても、体調を崩しちゃったら意味ないんだから｣
｢あはは、それもそうだな。心配かけて悪い。でもしばらくしたら落ち着くよ｣
｢それならいいんだけど……｣
ここで誰か、恐らく秋田が乱を呼ぶ声が聞こえてきた。乱は今行く！と返事をし、そのまま行こうとする。
｢本当に無理しないでね、あるじさん｣
｢ああ、ありがとう、乱｣
21色目 ｢ちょっと待て、こいつに会うことは想定してなかった｣。→←19色目 ｢だからもう頼むからみんな"色"を知っててくれ｣。
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作者名：蜂蜜パスタ | 作成日時：2024年1月11日 20時
