【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ18)

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17色目｢刀工が同じだと兄弟だという仕組みはどういう理論なんだか｣。ページ18

ヒューヒューとなる喉元を押さえつけて、必死に息を吸う。

｢さ、審神者さん……？体調が悪いなら無理をしない方が……｣

堀川が慌てて本体を取り上げるかのように近づいてきたから、待ったをかけた。

｢いや、これは私の仕事だ。私が、げほっ……やるべきこと。悪いな、これはただの喘息の発作だ。すぐに落ち着く｣
｢いや、でも……｣
｢いいから、やらせろ。傷だらけのお前達は見たくない｣

次は、とマスクを耳にかけ、今度こそ打ち粉をはたいていった。マスクで緩和されたのか、打ち粉では先程よりも苦しくない。そらそうだよな、埃よか断然マシだ。埃はダメだ。

いつもの様に、後半半ばトランスになりながら作業を終えると、堀川の本体は綺麗になり、同時に堀川の傷も治っていた。

｢審神者さん、体は大丈夫ですか？無理をしない方が……｣
｢マスクして打ち粉を吸わなければずっとマシだ。それにさっきよりは落ち着いてる。安心してくれ。……さ、次は山伏の番だぞ｣

左手を差し出すと、その手のひらの上に山伏は本体を預けてくれた。

｢あいわかった。しかし審神者殿、無理はなされぬよう。何事も体が第一であるぞ｣
｢分かってる。そこまでの馬鹿じゃないぞ、私は｣

するりと鞘から刃を抜き、また同じように打ち粉をはたき、紙で拭き取り、その作業を繰り返した。
だが……。

｢……っ……｣

正直、キツい。咳こそ出ないものの、恐らく喘鳴は3人全員に聞こえている。慎重に、ゆっくり呼吸をしなければ、肺に酸素がまわらない。苦しい。手入れが終わったらすぐにまた吸入しなければ……。アドエアじゃもうダメだ、エナジアを使わないといけない。

発作の苦しさと手入れのトランスで頭がおかしくなりそうな頃、喘鳴はある程度治まり山伏の本体も綺麗になってきていた。私ももう、ある程度会話が出来るようになっている。

｢お前達は兄弟なんだよな、全然そうには見えないが……｣
｢僕達は刀工は同じですけど、経歴は全然違いますからね。僕は新撰組の土方歳三が使っていた刀なんですよ｣
｢新撰組なのか。……新撰組といえば、加州と大和守もだな｣
｢2人とはもう随分長い付き合いですね｣

柔らかい笑みで堀川は答える。あまり私に警戒心は持っていないようだ。

｢拙僧は、拙僧ら兄弟を打った刀工国広が山伏の修行をしていた時に打たれた刀なのであるよ！｣

カカカ！と笑う山伏も、私を悪くは思っていないらしい。これは幸いだったな。