【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ17)

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16色目｢頼まれようが頼まれまいが、それは私のやるべき事｣。ページ17

手入れか、なるほど。

｢それくらい頼まれなくても……｣

私が言い終わる前に、山姥切は私の言葉を遮ってこう言い放った。

｢兄弟達を手入れしてくれたら、俺はあんたの刀になると誓う。だから……頼む。2人を、手入れしてやってくれ｣

頭を、下げた。あの山姥切が。あれだけ私に嫌悪感丸出しだった山姥切が。……もしや、山姥切の兄弟達はそれほど重傷なのだろうか。

｢……お前の兄弟、そんなに重傷なのか？｣
｢いや……2人とも中傷なんだ。だがそんな状態で動き回るから……あまりいい状態とは言えない｣
｢……｣

なるほど、それでか。でもなんで急に私に頼り出したんだ？確かに頼ってくれるのは助かりはするが……。

｢……どうして突然、私を頼る気になったんだ？｣
｢……それは…………｣

山姥切が目を逸らす。何かやましい事でもあるかのように。
しばらくの沈黙の後、山姥切は重い口をやっと開けて私に告げてくれた。

｢……あんた達の行動を、観察していたんだ。あんた達は……修繕で手一杯で、気づかなかっただろうが｣
｢なるほど、そういうことか。……はァ、まさかこの私が気づかなかったとは。お手上げだ。……と、言うより｣

ずい、といつかのように山姥切に顔を近づいて私は言う。

｢元から私はこの本丸の刀剣男士全員手入れするつもりだったんだ。お前達が自ら手入れを受けてくれるならそれに越したことはない。さあ、2人を連れて来い。私も手入れ部屋で準備をして待っているからな｣

***

｢来たか、待ったぞ｣
｢こんにちは、審神者さん｣
｢直接対面するのは初めてであるな、審神者殿よ｣

山姥切が、2人の兄弟……堀川国広と、山伏国広を連れてきた。とても兄弟には見えないが……まァ刀工が一緒なら兄弟なんだろう、うん。

｢まずはどちらから手入れを受ける？｣
｢そうですね……兄弟、どっちからにする？僕達、どっちも中傷だけど｣
｢うむ、であるならば兄弟が先に手入れを受けるとよい。拙僧はここで待っている｣
｢じゃあお言葉に甘えて。僕から手入れを受けますね｣
｢分かった、本体を貸してくれ｣
｢どうぞ、これです｣

堀川は案外すんなりと本体を渡してくれた。見ればやはり傷が酷い。というか怪我も酷いだろうに、よくこんなにも平気でいられるな。精神が強いのか、なんなのか……。

いつもの手順通りに、ぽふぽふと打ち粉で刀をはたいていった……が。

｢ゔ、げほっ、ごほっ！｣

打ち粉で、発作が起きてしまった。