56話 ページ25
『・・・・・何、これ』
え、あんなに真剣な雰囲気だったよね?と、中也に視線を送るが親指を立てながら笑顔を返されるだけだった。
"グッ!"じゃない!と怒りたくなるが、何せ今いるのはお洒落な喫茶店なのだ。大声は出せない。しかもAの服は鮮やかで落ち着いた色のワンピースになっている。
それもこれも、全て中也が着せ替え、連れ出したのだ。
『なっ、んで私は、中也と、デェト、みたいな、ことに、なってるのかな?!』
衝撃が大きすぎて言葉が途切れ途切れになっているが、中也は気にせずいい笑顔を向けてくる。
数年ぶりに殺したくなる気持ちを抑え、紅茶を一気に飲み干した。
中也「Aと俺の仲だろ?」
『爆発しろ』
口調も、怒りすぎたせいで乱暴なものへと変わっていった。だが、それすらも楽しいかのような態度に怒りを通り越して呆れてくる。
変態か?マゾか?マゾだな。と納得したところ、中也が"なあ"と口を開く。
中也「久しぶりだよな、こうして二人きりなの」
『ん?ああ、そういえば』
相棒だったころは、毎日のように二人一緒だった。
暗殺も、書類整理も、首領への報告も、訓練も、食事も、寝るときも・・・・・。あれ、今思うとアウトじゃないか?
中也「Aがマフィアを辞めるなら、もっと傍にいたのにな」
『いや、あれ以上どうやって傍にいる気だったのか知りたいんだけど』
中也「聞くか?まず着替えだろ?数少ない休日と風呂と『気色悪いから言わなくていいよ』」
聞かなければ良かったかもしれない。かつての相棒がこんなことを考えていたなんて・・・・・。
Aは頭を抱えるが、中也の"でも"という言葉にもう一度顔を上げる。
中也「もう二人きり、はほとんど無いもんな」
悲しそうな顔に、うっかり心が揺れ動いた。すぐにハッとして思い直す。
_____何で中也に動揺してるの私!"あの"中也だよ!?
中也「兎に角、俺は楽しかったんだぜ?"二人きり"」
どうしてそんな顔で笑うのか。心臓が痛く、苦しくなった。
『・・・・・馬鹿』
中也と同じ悲しそうな顔も、涙も見せたくないから。Aは下を向く。
でないと、とてもじゃないけど普段のように笑えないから。
今だけは、下を向く。
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黒月夜*(プロフ) - 昨夜の狼昨狼さん» ありがとうございます!更新頑張ります!!( ^ω^) (2019年2月15日 19時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
昨夜の狼昨狼(プロフ) - !!!俺が求めてた展開になってて嬉しいです!!気長に待ち続けますんで更新頑張ってくださいね!*×^)/ (2019年2月15日 0時) (レス) id: eeb60ba8fb (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜(プロフ) - めろんぱんさん» ありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年1月1日 1時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - タイトルに惹かれてイッキ読みしてしまいました!大好きです!更新お待ちしてます! (2018年12月31日 22時) (レス) id: 0025d5f8f2 (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜(プロフ) - 咲希さん» コメントありがとうございます!もっと乱歩さんの可愛さを出せるよう頑張ります! (2018年12月31日 20時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒月夜 | 作成日時:2018年9月18日 14時