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『良いですよ。是非』
(A君っ!?)
「そうだっ! 貴女も良ければご一緒しませんか?」
「えっ!?」
「もっと、貴女の事を知りたいな」
なんて、女性を落とす勢いで太宰さんが笹田さんに詰め寄る。
(うぅ、A君の家に行きたいっ! でも漏れなくこの変人が一緒……うぅ〜)
笹田さん、悩んでいる。
暫く悶えていると、シュンと顔を伏せた。
「……ご、ごめんなさい。お誘いは嬉しいのだけど、今日は都合が悪くて……」
「そうかい、それは残念」
「では、私はこれで……」
頭を下げて、笹田さんは逃げる様に去って行った。
二人でその姿を見送った後、俺は太宰さんを見上げる。
『助かりました』
「何時になく君が引き攣った顔をしていたから」
どうやら諸々の事情を察して助け船を出してくれたらしい。
でも、今日の所は退いてくれたけど、簡単には諦めてくれないだろうな。
まだ家まで来る事はないけど、それも時間の問題かも。
そんな不安を察したのか、太宰さんが「心配ないさ」と云う。
「暫くはそれどころじゃないと思うから」
『何がですか?』
「それにしても、モテる男は苦労するねぇ……お互いに」
『?』
そう呟く太宰さんが、チラリと後ろを窺っていた事を、俺は知らなかった。
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翌日の朝。
ニュースで火災の報道がされていた。
昨夜、とあるアパートの一室に女性が放火をしたそうだ。
住人の女性に「彼氏を盗られた」ことを恨んでの犯行らしい。
幸い、住人の女性に怪我はなかった。
後に知った事だが、あの火事の被害者は笹田さんだった。
目撃者によると、燃える自室を見て「〇〇くんが燃えているっ!」と泣き叫んで、
炎に飛び込もうとして消防隊員に止められていたらしい。
しかし、彼女はあのアパートで独り暮らし。
同居人は居ない筈なのだ。
そんな事が遭った日から、俺のバイト先に笹田さんの姿が現れる事はなかった。
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ソルト(プロフ) - この作品にてねこぱふぇさんの作品を全て読み終わりました。どの作品も面白く1日で読み終わってしまいました…これから2週目に入ります。今後のご活躍を期待させていただきます。 (2019年6月14日 0時) (レス) id: 61b043fd1c (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - ネコぱふぇさん» 弟君の幼女化ありがとうございました!!弟君シリーズすごく好きです!!これからも応援しています! (2019年4月30日 21時) (レス) id: 3faee80352 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのごん子 - 獄都事変とコラボしてガッツポーズしたのは私だけじゃないはず (2019年4月29日 21時) (レス) id: 1eba992f2c (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - 大阪さん» すみません。バチカン奇跡調査官は詳しくないです。 (2019年4月29日 10時) (レス) id: 3da7122dd2 (このIDを非表示/違反報告)
大阪 - リクエスト、まだ大丈夫でしょうか?バチカン奇跡調査官とのコラボがみたいです… (2019年4月29日 5時) (レス) id: 513b666ef4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネコぱふぇ | 作成日時:2019年3月24日 23時