薄れる意識の中 ページ5
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『……っ』
紙の槍は、男の顔の横を通り過ぎて行った。
薄皮を切り、赤い線を引いただけで終わった。
頭の中で、織田作さんの声が聞こえた。
寸前で狙いを反らしていた。
「……やはり貴君では駄目の様だ」
男がそう呟き、流れる様な動きで私に拳銃を向けた。
そして、躊躇なく引き金を引いた。
『っ!!』
腹部を一発撃たれ、私は膝を着いてそのまま倒れた。
『がっ……はぁっ……』
「憎む相手に対して殺しを躊躇うか。それでは子供達を助ける事など出来ない」
男は踵を返し、私から離れた。
「サクノスケに伝えろ」
――待っている。やはり乃公を殺せるのは、お前だけだ。
そう言い残して男は部屋を出て行った。
薄れ行く意識の中、足音だけが頭に響いた。
『ま、て……』
体を引きずって前に進もうとするが、体が重くて思う様に動かない。
ドクドクと血が流れている感覚が続いている。
『……織田、作……さん』
目の前がぼやけて、真っ暗になった。
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「――っ! ――っ!! Aっ!!」
名前を呼ばれて薄く目を開けると、織田作さんが居た。
「Aっ! しっかりしろ!」
『……お、ださく、さん……?』
喉がカラカラに乾いていて、思う様に声が出ない。
伝えないと。
子供達の事、男達に攫われた事、あの男が云っていた事。
弱々しく息をしながら、私は織田作さんの上着を握った。
『み、んながっ……まも、れなく、て……ご、め……なさ……』
「喋るなっ! 今救急車を――」
織田作さんの声が段々聞き取れなくなり、視界が狭まって行った。
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セキセイインコ(プロフ) - この異能力めっちゃ強い (2020年12月24日 9時) (レス) id: 9e59c5682d (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - 藍色眼鏡さん» ありがとうございます。喜んで頂き嬉しいです! (2018年4月30日 16時) (レス) id: 1f1c692189 (このIDを非表示/違反報告)
藍色眼鏡(プロフ) - 完結おめでとうございます。凄く良いお話でした(泣) (2018年4月30日 14時) (レス) id: 07c13963ee (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - しろねこさん» ありがとうございます。番外編もぼちぼち頑張ります (2018年4月30日 13時) (レス) id: 1f1c692189 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - eyeさん» ありがとうございます! (2018年4月30日 13時) (レス) id: 1f1c692189 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネコぱふぇ | 作成日時:2018年2月12日 23時