その名は・・・ ページ11
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太宰をそう尋ねた時、店の扉が開いて一人の少女が入って来た。
『あぁ! やっぱりここに居ましたね、太宰さん!』
太宰と種田長官が座る席の前に来て、少女は太宰に向かって云った。
「やぁみっちゃん! 良く私がここに居ると分かったねぇ!」
『白々しい。“場札”を付けられているって判っている癖に』
みっちゃんこと、Aは呆れ顔で太宰を見る。
そして体を種田長官に向ける。
『すみません。この人が勝手に相席を名乗ってタダ酒を飲もうとして、ご迷惑をお掛けしましたっ!』
「言葉が辛辣だよ、みっちゃん。私はまだ酒の一滴も飲んで居ないのだけれど」
『今“まだ”って云いました? やっぱり飲もうとしていたじゃないですか! 仕事探すって云って出掛けた筈ですよね!』
「いやいや、待ちたまえよ。私はちゃんと仕事を探していたのだよ」
太宰は手を種田長官に向けて、Aに紹介をする。
「こちら、内務省異能特務課の種田長官。今し方一つ仕事を紹介して貰っていたところでね」
『……え、特務課……ちょ、長官っ!! え、えっ! ええええっ!?』
太宰と種田長官を交互に見て、驚き慌てるA。
「静かにしたまえ、お店だよ?」
『すっ! ……すみません』
太宰がそう云うと、すぐに手で口を押えて、恥ずかしそうに顔を赤くする。
「はっはっはっ! 何とも面白い子を連れとるなぁ。君も彼と同じ、仕事を希望かね?」
『は、はいっ! Aと申します。あの……種田長官、先程太宰さんが仕事を紹介して頂いたと聞きましたが……』
遠慮がちに種田長官に尋ねるAは、少し近付いて言葉を続けた。
『……その職場では、人を救うお仕事は出来ますか?』
Aが云うと、種田長官は目を丸くして驚いた。
そして、盛大に笑った。
「はっはっはっ! 君達は良く似とるよ」
『えぇっ!? 何処がですかっ!?』
「みっちゃん、そんな嫌そうに云わないでよ」
「まぁ、彼女の言葉の方が誠意を感じるがな」
「私も真面目に云ったつもりなんですがねぇ」
肩を竦めながら云う太宰。
「尚更、君達に紹介して良い所だ」
「それで、その組織の名前は?」
改めて、太宰が種田長官に尋ねる。
隣に立つAも、期待を胸に言葉を待った。
「名か? その会社の名前はな――」
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その会社に、二人が働き始めるのは、今から二年後の事だ。
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セキセイインコ(プロフ) - この異能力めっちゃ強い (2020年12月24日 9時) (レス) id: 9e59c5682d (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - 藍色眼鏡さん» ありがとうございます。喜んで頂き嬉しいです! (2018年4月30日 16時) (レス) id: 1f1c692189 (このIDを非表示/違反報告)
藍色眼鏡(プロフ) - 完結おめでとうございます。凄く良いお話でした(泣) (2018年4月30日 14時) (レス) id: 07c13963ee (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - しろねこさん» ありがとうございます。番外編もぼちぼち頑張ります (2018年4月30日 13時) (レス) id: 1f1c692189 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - eyeさん» ありがとうございます! (2018年4月30日 13時) (レス) id: 1f1c692189 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネコぱふぇ | 作成日時:2018年2月12日 23時