*原一哉のわがまま*1* ページ35
「……なんか忙しそうだね?休日なのに」
「あー、実はちょっとね」
休日の昼間だというのに何やらぱたぱたとダイニングを行き来するAが気になって
声をかけると、そんな風に濁された。
「ちょっと、なに?」
「え、気になるの?一哉いっつもガムに夢中なくせに」
いやガムより夢中な存在なんだけど。とは言ってやらずに、
「気になるの」
と、問いかけておいて本当に良かった。Aが満面の笑顔で、
「今からケーキ作るの!」
「は!?ちょ、ストップ!!俺に手伝わせて!!」
「???」
暗黒物質を生成しようとしていたのだから。
俺の奥さんであるAは、笑顔が素敵で頭も良くて、
俺にはもったいないくらいの才色兼備を地で行くひとなのだが、
料理だけが絶望的にダメだった。という事に気付いたのは付き合ってからである。
ただやはり物覚えは良いのか何度か練習すれば普通に作れるようになるのだが、
初めてのメニューを1人で作ると、分量も手順も完璧なのに暗黒物質ができる。
もはや錬金術か何かのレベルとしか思えないが、そんなものを作らせる訳にもいかず、
今回のように突発的に彼女が料理を始める時には割り込んででも手伝うのが俺の使命だった。
「ええ、休日なんだし一哉にはゆっくりしててもらいたいのに。
大丈夫だって、最近色々作れるようになってきたでしょ?」
その色々を習得するまでに俺がどれだけ手伝ったのか覚えていないのだろうか。
多分そうだろう。昔から料理に関してだけは根拠のない自信をもって突き進む奴だった。
「ま、まあそうだけど……あー…………ほら、一緒に作った方が楽しいじゃん」
「一哉…………!昔はぜんっぜん興味なかったのに…………!」
いや、一緒に作らないと俺が逝くから、などとは言えず。
感動しているAに一抹の罪悪感が湧くが仕方がない。
「それで、良い?」
「もちろん!じゃあ、2人でおいしいケーキ作ろうね!
あ、料理する時はガム噛んじゃダメだからね?」
「ほいほーい」
名前がひらがなで刺繍された小学生用みたいなエプロンを着けるAに言われて、
俺は膨らませたミント味を破裂させ、ガムへの別れの挨拶とさせて頂いた。
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ゆな子(プロフ) - 高尾ちゃん&笠松&黛は一番キタわ。心臓が3ついりますね。 (2019年8月27日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
赤 - 最高でした。赤司くんと黛さんのが特に最高でした。きゅんきゅんしました!!!! (2018年9月4日 12時) (レス) id: 14fcda4380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - 大ちゃんありがとうございます!いつも楽しく読ませて貰ってます!!大ちゃんに萌えましためっちゃ(笑) (2017年9月30日 8時) (レス) id: b6dcf803c3 (このIDを非表示/違反報告)
伊月千歳@白咲智歌(プロフ) - もろへいやさん» そうなんですか!わかりました! (2017年9月24日 9時) (レス) id: e71731f15b (このIDを非表示/違反報告)
もろへいや(プロフ) - 伊月千歳@白咲智歌さん» 大変申し訳ないのですが、こちら残り話数がかなり少ないので、現在リクエストにはお応え出来ません。本文中に明記せず本当にすみません……ご理解頂けると幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年9月23日 23時) (レス) id: 0747be2c14 (このIDを非表示/違反報告)
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