【黒バス】きみのわがままがききたい【短編集】

＊緑間真太郎にわがまま＊1＊ ページ4

「ただいまなのだよ」
「おかえり、真太郎」

鞄もらうね、お風呂どうぞ、と伝えると、真太郎は分かった、と頷いた。
ちなみに、現在時刻は午前0時半だ。



私の旦那様である緑間真太郎は、医者見習いという職業柄生活が不規則になりがちだ。
それでもやっぱり新婚だから、という理由を付けて、
帰って来るまでは起きていようというのが目下の私のポリシーなのである。
他人からすれば少し淡白な返事も、いつもの事なので特に気にはならない。



「おい」
「うん？」
「……すまないが、今日はもう少し起きていてくれるか」
「分かった、がんばるね！」

敬礼の真似事をすると、真太郎は少し____高尾か私じゃないと分からない位____笑って、
そそくさとお風呂の用意を始めた。



「待たせた」
「う、ん……」

頑張るとは言ったものの、特にする事もなく過ごす深夜というのは恐ろしく眠くて。
元々夜はすぐに寝てしまう方の私は、
真太郎が戻ってきた時には座ったまま夢と現をさまよっていた。

「A……眠いなら我慢するなと、いつも言っているだろう」

細くて長い指が髪の毛の間を滑るのを、ぼんやりと感じる。

「うーん……でもきょうおきててねっていったのはしんたろう……」
「む…………それはそうだが」

自分で何を言っているのか良く分からない。だめだ、意識持っていかれそう……
かくん、と首が下を向いた時、何やら宙に浮く感覚を覚えた。

「それで……どうしたの…………？」
「こんな状態のお前に話す程、俺も馬鹿ではないのだよ。今日はもう寝ろ」

起きていたら、「さっきまでは起きててって言った癖に」と言えたのだろうが、
ふわふわと揺れる心地良い感覚の中で「寝ろ」と言われて、起きていられる筈もなく。





ぼすん、とふわふわに包まれる感触と、

「……お前はいつもそうだ。自分の限界も考えずに張り切って……無理をさせて、すまない。
明日は休みを取ったのだよ。偶の休み位、俺にも人事を尽くさせろ」





真太郎の声が聞こえるなあ、と少し嬉しくなりながら、私はすうっと眠りに落ちた。





ぱちり、と目を開ける。何だか寝覚めが良い。

「良く眠れたか」
「って真太郎！？」

いつもは無い事なので気が付かなかったが、すぐ横に真太郎が立っていた。

「え、もしかして私寝坊し……うわああああ8時！？
そりゃ寝覚めも良いはずだわ！！ちょ、完全に寝過ごしたごめ」
「今日は休みだ」
「…………休み？」

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