現実ってそううまくいかない...わけでもないんだよね～黒バストリップ～Part6 (ページ50)

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▽(引き続き)鈴村side

｢え、でも何で急に高尾に黒子のミスディレクションが効くようになったんだ？｣
『黒子君は自分から意識をそらす前に、自分に引き付ける誘導をしたんだよ。
つまり、高尾君の視野も狭くなる。狭い視野なら、見失いやすいだろ?』

不思議そうに言った河原に、りっさんが答えた。もちろん、メモするのは忘れない。

黒子を見失った彼はというと、ボールと火神の間に入り込んでいた。
黒子を見失っても、コースが解れば取れるという算段なのだろう。
しかし、彼は一つ、見落としていることがある。

黒子が、幻の6人目(シックスマン)であるということを。

｢このパスは、加速する…！｣

今までの、ただ軌道を変えるだけのパスではない、ボールを殴るようにして放たれたそれは、高尾の手を弾くような鋭いパスだった。
そしてそれを受け取った火神が超跳躍を使い、ダンクする。
これで火神は全てのジャンプを使いきってしまったことになる。
けど、決して彼のダンクが無駄だったわけじゃない。
今のシュートは、きっと彼らの…いや、俺たちに活力を与えてくれたはずだから。

…と、不意に背中に強い衝撃が走った。

｢…いﾞｯ?!｣
｢何ボーッとしてるの、出番よ｣

どうやら、背中に喝を入れた(?)のは彼女だったらしい。

｢…拓君、さっき私が言ったこと、忘れてないわよね?｣
｢…う、｣
｢忘れた、とは言わせないわよ?｣

___たまには、何も考えないでボールを追いかけてみなさい___

忘れてないわけがない。というか、忘れられなかった。
思わず口籠もる俺に、カントクは有無を言わせない笑顔で言った。

｢…ハイ｣

もうYesと言うしかない。

｢俺が本気出したらやっかいですよ、かなり｣
｢そう、それは楽しみね｣

あまりにも楽しそうに彼女が笑うので、何だか俺まで笑えてきた。
けど、笑うのは試合が終わってからにしよう。

｢誠凛メンバーチェンジです｣

秀徳がタイムアウトを終えたタイミングで、足が辛そうな火神を少しでも休ませるために、火神と交代することになった。

｢…あとは、頼んだぞ｣
｢…ああ。｣

彼と手を合わせて一瞬だけ言葉を交わし、俺はコートに踏み入った。