アンサー▼ ページ8
さふ、と目線を下にやったAの表情は、腕を回され密着したこの近すぎる距離のせいで伺うことはできない。
Aはただ何も言わずに俺のブレザーを握りなおした。衣擦れの音がやけに大きく響いた気がしたのは俺だけの気のせいだろうか。
「……っ」
根拠もきっかけもわからないけれど突然彼女がとんでもなく愛おしく感じて、頭をくしゃりと撫でればAは肩に力を込めた。
大丈夫。だから、その力を抜いてはくれないか。そんな想いも込めて、壊れ物を取り扱うようにサラサラの髪に指を絡める。
少し怯えて、けれどどこかで急かすように見つめてくるブラウンの瞳が答えを待っている。赤いペンを左手に、俺の導く「答え」とAの持つ「正解」を照らし合わせようじゃないか。
「……Aが見たのは、悪い夢なんかじゃないよ」
そうとだけ言えば、こくりと静かに唾をのむ音が聞こえた。
俺の言葉の裏側を覗こうと、目の前のAは必死に思考を巡らせている。
言葉の真意にたどり着くヒントをやってもいいのだが、生憎今の俺はAの心中を当てる「解答者」なわけで、逆に質問をするのも焦らして解答を長引かせるのも本意ではない。
さっさと答え合わせをしてしまおう。
「……嫉妬、でしょ?」
唇を噛んでいたAは、そのままパッと下を向いた。真っ赤に染まった頬を隠しているつもりなのだろうが耳まで赤いためバレバレである。
これだから放っておけない、と気づけば手は彼女の顔へと伸びていて、すっかり熱くなった頬をするりと滑る。
びく、と少し大げさに肩を震わせて、必死に顔の赤いさまを隠す様子がいじらしい。誰よりも近くで、誰よりも多く見ていたいのに。
くい、と顎を掴んで持ち上げて、無理矢理に目を合わせる。
顔が固定されていても必死に目を逸らして逃げようとするA。
追いかけても追いかけても捕まらないその瞳にどうしようもなく腹が立って、固く噛まれた唇に自分のそれを無理矢理にねじ込んだ。
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作者名:雫月 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年2月14日 23時