ディスタンス▼ ページ5
おかしい。あまりにも。
その後何を言ってもただ「ごめん」と呟いて俯くだけの彼女に何があったのだろう。
安心してもらおうと頭を撫でてもばつが悪そうな顔をするだけで、俺にはどうすることもできない。
何でもかんでもその小さい腕で抱え込んでしまう君をせめて俺らしく後ろから見守って、転びそうになった時にさりげなく支えてあげたいのに。
「なんかあるなら、話しなよ」
「……うん、大丈夫」
いつもそうやって突き放すから、いつまでも近づけない。
いつまでも埋まらない距離がとてつもなくもどかしい。
ぴったり心をくっつけて、寄り添って、和らげてあげたいのに。
「……ねぇ、分かってる?」
王さまのいう「円卓」……炬燵に潜り込んで、テーブルにこてんと頭を預ける。
びく、と少し怯えた様子で彼女の方が震えた。それでも目線は頑なに合わそうとしない。
一体なにがAを怯えさせるのか。それをどうやったら取り除けるのか。
「二人きりの時くらい、『プロデューサー』じゃなくて『彼女』で居ていいんだよ」
だって、隠されると寂しいじゃん。隠してると辛いじゃん。
何だか俺だけが一方的に好いている気がして、どうしようもなく不安になる。
「……私のこと、嫌いにならない?」
足が突然冷気に晒される。毛布が持ち上げられていて、思わず隣を見る。
眉根を下げて不安を見せる彼女に、肯定の意として口角をそっと上げる。
こつん。
肩と肩の触れ合う音が心地よい。
一瞬つよくぶつかった肩から、温もりが波を立てて全身に駆けて行った気がした。
一瞬交わった視線が、恥ずかしそうにふいと逸らされる。
「正面から言うのは恥ずかしいから、できるだけこっちは見ないでほしいな、なんて」
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作者名:雫月 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年2月14日 23時