100万回目の告白 6 ページ6
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鎌田という男は、バレーボール部で背が高くて、ラクダのように濃い顔をした、色男だった。
鎌田と一緒にいるあいつは、俺の前とは違ってしおらしく、小さく笑う、普通の女の子のようで。
移動教室や、朝礼かなんかでその姿を見かけては、俺は小さく舌打ちをした。
なんやねん。なんやねん。
お前にとって俺は、なんやったんや。腹立つな。
あいつが鎌田に向かって笑うのを見ると、吐き気がした。
なあ、知っとるか？
そいつはな、気に入らんことがあると黙って俺のこと睨みつける、クソガキやで？
お前はそいつのそんなとこ、見たことあるか？
何より気に入らなかったのは、あいつが俺のことを、鎌田に紹介したことだった。
「ムラカミ、友達なの。中学一緒で」
「知ってる、一緒に帰ってるもんね」
東南アジア系を連想させる鎌田の顔を、俺は曖昧に眺めながら、借りてきた猫のように大人しく振る舞うAの声を聞いていた。
「あー、カレシに失礼やんな、俺これから違うやつと帰るから。すまんな、鎌田クン」
「え、ムラカミ？」
「なんやねん、そういう話やったんやろ」
俺は気味の悪い2人を背中に、その場から逃げ出した。
ラクダの声で、「おれは全然気にしないからね」とあいつに囁きかけるのが聞こえて虫唾が走った。
とはいえ、俺はたかを括っていた。
あいつの性格を知っている。そう長くは続かないだろう。きっと、すぐに気づくだろう。
俺の方が、お前に近かったやろが。
子供だった俺は、それからあいつに話しかけることができなくなって、駅や電車や、学校で見かけても、徹底的に無視を続けた。
あいつと鎌田は、どうやらかなり仲のいいカップルだったらしく、時折誰かの口からその噂を聞いた。
そういえばあいつは、うまいこと馬鹿のふりをできているのだろうか。
ふとそんなことを思ったけれど、確認する術もなく、とはいえ普通の彼氏がいるんだから、普通の女の子になれているのだと、無理矢理唾を飲み込んだ。
俺たちの入った高校は、公立とはいえそれなりにレベルの高いところだったから、2年に上がる頃にはもう、進路選択を迫られていた。
そこで、高校受験の時にあいつの前で必死こいて勉強した日々を思い出す。
なんのために俺は、あんなに頑張ってたんやっけ。
「ヒナ、お前大学行くん？」
「まあ、行くんやろなぁ。長男やし。親もその気やろから」
「俺高校卒業してまで勉強したないわ〜」
そしてまた、春がきた。
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作者名：猫彦 | 作成日時：2021年2月20日 11時
